歯科医院は「斜陽産業」なのか? 倒産・休廃業が過去最多ペースの背景にある“本当の理由”

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「歯科衛生士は、国家資格者であるにもかかわらず、給料が安く、休みも取れないうえに、歯科医師のアシスタントとしての仕事や雑務ばかりすることが珍しくない。『本当は歯周治療や予防歯科の仕事がしたい』と考えている歯科衛生士は多く、彼ら彼女らのやりがいを創出することができれば、予防の重要性を患者さんが理解し、リピートを生む好循環になると考えた」

治療中心の歯科医療は、「治療が終わればおしまい」である。だが、予防中心の歯科医療は、長期的な関係性を築くストックビジネスになりえる。2020年には、歯科疾患の重症化を予防するための保険適用の範囲が広がったこともあり、歯の予防がリーズナブルにできるようになったことも後押しした。実に、しん治歯科医院の年商8.3億円のうち、予防2億円、訪問歯科3億円――収益の半分以上を予防と訪問で計上する。

同医院の予防における患者リピート率は99.2%を誇る。

「お口が健康であり続ければ、健康寿命を延ばすことができます。歯科医院がコンビニの数より多いということは、やり方次第では地域のインフラになれます。もっと健康になりたいという思いを叶える、人々の健康を支えるハブになれる可能性を秘めているということです」

しかし、多くの歯科医院があぐらをかいたままだと語気を強める。

経営するという感覚に乏しい

「治療に重点を置くと、単価の高い治療は何かという発想になりがちです。生き残るために高額な治療を正当化しようとします。本当にすべての人がそのクオリティを望んでいるのでしょうか。また、私はコンサルをする中で、多くの歯科医院経営者と顔を合わせますが、『早く辞めたい』と漏らす院長先生が本当に多い(苦笑)。

前提として大変な仕事であることは、実家が歯科医院なので十分に承知しておりますが、それでも自分ファーストかつ、根本的なモチベーションの低さが、スタッフ離反、業績悪化や廃業につながっている感は否めません。歯科医師である以上に、経営者である院長先生にはいつまでも夢を語っていてほしい」

現在、髙橋氏は予防に重点を置くビジネスモデル“デンタルフィットネス”を、全国の歯科医院に普及している。同氏がメスを入れた歯科医院190軒は、すべて業績が改善しているという。

「歯科医院は、家業型ビジネスであるため、常に成長し続けるという意識が希薄です。端的に言えば、企業的感覚で経営するという感覚が乏しい。そのため、歯科衛生士という経営資産・人材を上手に機能させるといった発想にならないんですね。裏を返せば、少しの覚悟を持って改革する気持ちがあれば、今ある環境に追加投資せずに経営を立て直せる歯科医院は多いんです」

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