「がんでも治療受けられず死去」「生命を担保に自白を迫られ…」えん罪だった《大川原化工機事件》や角川歴彦氏の長期勾留、なぜ起こった?

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人質司法
KADOKAWA元会長・角川歴彦氏や「大川原化工機事件」の関係者らに対して行われた「長期勾留」は非人道的ではないかと話題になっている(筆者撮影)

被疑者・被告に対して、重い病気になるなどしても勾留を続けるのは、命を担保に自白を迫る『人質司法』だ――。

「東京五輪汚職事件」で起訴されたKADOKAWA元会長・角川歴彦氏(81歳)や、「大川原化工機事件」のえん罪による勾留で父親を失った男性が7月中旬、都内で開かれた会合でこのように訴えた。

高齢で新型コロナ肺炎が重症化しても、進行性のがんが見つかっても、医療機関の受診すら許されないという長期勾留は、なぜ起きるのか。

「無罪主張で勾留226日」精神的に追い込まれた

角川氏は2022年9月、東京五輪汚職事件に絡む贈賄容疑で逮捕・起訴され、東京拘置所で226日間勾留された。当時79歳と高齢で、心臓に持病を抱えて10種類以上の薬が処方されていたが、勾留中は服用できる薬も限られた。

「体力が落ちてくると毎月、勾留延長の時期がくるたびに『保釈されるのでは』という妄想に駆られ、そうでないことに落ち込む。こうして精神的に追い込めば、自白の可能性が高まると計算したうえでの長期勾留だったと思います」(角川氏)

弁護団は、持病があり高齢の角川氏の健康を案じ、何度も保釈を請求したが認められなかった。実際に角川氏は新型コロナ肺炎に感染して高熱を発し、持病も悪化して弁護士との接見中、2度にわたって意識を失った。

「このままでは命にかかわる」と危機感を募らせた弁護団は、証拠の取り扱いに関する検察側の要求を不本意ながら一部認めた。すると、保釈が認められたという。

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