"古い建物好き"を唸らせる名建築、どう後世に残していくか。東京・中野《三岸家住宅アトリエ》孫娘が託した継承者、共に描く再生の道

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アトリエから応接室を見たところ(写真:©三岸アトリエ 撮影/千葉正人)
アトリエを入ったところにある細長い作業室
アトリエを入ったところにある細長い作業室。もともとは左側の壁がなく、アトリエと一体になっていた(写真:©三岸アトリエ 撮影/千葉正人)

「1年ほど運営してきましたが、アトリエはこの間で1000万円以上の売り上げを上げています。グラビア、ファッション、ドラマその他さまざまな撮影ニーズがありますし、見学会でも入場料を取るようにしています。

後世に残していくためには今回の改修はもちろん、今後もお金がかかります。それを説明、皆さんにお願いしています」(片山さん)

螺旋階段
らせん階段。1階の壁、ドアは当初無かった(写真:©三岸アトリエ 撮影/千葉正人)
螺旋階段上からアトリエを見下ろす
らせん階段上からアトリエを見下ろす(写真:©三岸アトリエ 撮影/千葉正人)

10年前に始まったスペースレンタルは動画市場の広がりや発信する個人が増えたことなどで大きく広がっており、文化財を保存する力になるまでになっているのだ。

建物躯体そのものに加え、改修はしても内装の壁の古さを新しくするわけにはいかないなど難しさもあるが、すでに改修計画は動き始めている。

費用の問題解決はまだこれからだが、これまでも難しい物件を蘇らせてきた人たちが関わるのである、きっとなんとかなろう。いや、なってほしいと愛子さん。

ここでは取り上げられなかったが、建物保存の専門家その他関わってきた人は多数。その人たちを巻き込んでここまで漕ぎつけて愛子さんの思いを実らせていただきたいものである。

アトリエが成し遂げたこと

ちなみに藤木さんと愛子さんとの出会いは後日の「家いちば」誕生に寄与している。

「空き家になっていても、荒廃していても建物を残したいと思う人がいる、その思いを伝えることで継承を可能にできないか、そこから『家いちば』は始まりました」と藤木さん。

1軒の空き家をなんとかしたいという思いが多数の空き家を動かすサイトに繋がった。その意味でアトリエは、すでに大きな仕事を実は成し遂げているのかもしれない。

三岸アトリエの関係者の皆さん
右から三岸アトリエの新しい所有者であるキーマンの片山さん、改修に当たる樋口さん、三岸節子・好太郎の孫である山本さん、アドバイスを続けた「家いちば」の藤木さん(写真:筆者撮影)
カーサ・ビアンカ1階からアトリエ
カーサ・ビアンカ1階から見たアトリエ。日本とは思えないような風景が広がる(写真:©三岸アトリエ 撮影/千葉正人)
2階の廊下
2階の廊下も味わい深い(写真:©三岸アトリエ 撮影/千葉正人)
【前編】放置された空き家でも「貴重な文化財」、解体寸前だった戦前木造モダニズム建築「三岸家住宅アトリエ」。孫娘が必死に模索する継承
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【写真】アトリエと裏手のマンション「カーサ・ビアンカ」の様子など(22枚)
中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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