だが、実際に残すための活動はこれからがスタートだ。というのはカーサ・ビアンカ、アトリエともに当初見込んでいたよりも多額の改修費がかかりそうなのだ。
カーサ・ビアンカは3階建てでわずか5部屋の小規模物件。そのまま改修しても賃料はそれほどあげられない。デザイン性の高い物件にすることでなんとかできないか、検討が始まっている。

文化財を残していく難しさ
そして、アトリエ。同社にとって木造の耐震補強は初めてのうえ、アトリエは登録有形文化財である。特に外観の変更に関しては一定の要件もある。
それにそもそも、アトリエは最初から大きな問題を抱えていたと改修の設計を手掛ける建築継承研究所の樋口智久さん。


「もともとの建物の特徴は南東面に設けた天井までの全面ガラス窓に2階が浮いて見えるような造り。
ドイツなら鉄骨造で造ったでしょうが、日本ではコストがかかりすぎて無理。そこで木造で造ったのですが、ガラス窓のマリオン(窓やカーテンウォールを縦に分割、横架材を支える)が構造体となって2階の床を受けていました。
荷重を支える力がない部材にその役割を担わせていたわけで、この建物にはそうした形にこだわったための無理が多く、それが雨漏りや歪みその他不具合に繋がっています。それをなんとかしようということで増改築が繰り返されてもおり、問題をさらに複雑にしています」(樋口さん)


解体して新たに建て直す以上の、当初考えていたよりはるかに費用がかかるとあって片山さんは今、頭を抱えている状態。
といっても直さなくてはいけない。稼いでくれるのはアトリエだからだ。

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