「カフェに座れない時代」なのに一人負けのサンマルク。スタバもタリーズもコメダも好調の中で「4年で4分の1が消滅」。要因はどこにある?

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縮小

こうしたなか、サンマルクHDはその対応策として店舗数を大幅に減らすことになる。これが「不採算店舗の縮小」である。

先ほども述べたように、全店舗の25%近い店舗が2021年から2025年の間に閉鎖された。タイトルではやや煽る形で表現したが、閉店は決してネガティブなワケではなく(ポジティブでもないが)、適正な規模感だったり、筋肉質な組織へと変えていく手段の1つだ。

それと同時に既存店舗の改装も進めた。現在、いくつかの店舗ではセルフレジの導入などが行われているが、こうした収益体質の改善を進めている最中なのである。

倉式珈琲店
珈琲系チェーンが増えるなか、そこまで伸びているわけでもない「倉式珈琲店」

また、同じサンマルクHDに属するカフェ「倉式珈琲店」についても同様で、不採算店舗の閉鎖を進めている。「倉式珈琲店」はサンマルクカフェよりも少しお高めのカフェであるが、ホールディングスとしてはカフェ事業そのものにメスを入れている。

V字回復は成し遂げたけれど

「サンマルクが消えている」……と、少しセンセーショナルに書いてしまったし、現にサンマルクカフェは経営不振を背景に、店舗数を減らしている。

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ただ、こうした取り組みの成果が現れ始めたのだろうか。サンマルクカフェを含むサンマルクHDの業績は、ここ2年ほどで改善してきている。

2023年3月期の営業利益は2億円と黒字化。さらに、2024年3月期の営業利益は993%増の26億円と、大幅すぎる回復を成し遂げた。文字通りの「V字回復」である。

ちなみに同じ期(2024年3月期)を見ると、売上高は11%しか増加していないので、客足が大幅に伸びたというより、不採算店舗を閉店したことによる営業効率の大幅な改善の効果が現れたといえるだろう。最新決算である2025年3月期の営業利益も、前年比39%増の36億円で、閉店の効果がしっかり出ている。

とはいえ、昨年サンマルクHDが発表した「中期経営計画」では2026年3月期までの目標として「『サンマルクカフェ』業態を中心とした運営効率の改善」が目指されており、その改革は現在進行形である。

(出所:決算説明会資料より)

その意味でも、これからもあなたの近所のサンマルクが閉店する……なんてことがあるかもしれない。これらの改革は長期にわたるものであり、今後の顛末が待たれるところだ。

では、どのようにサンマルクは変わっていくのか。ポイントは「カフェ以外の業態が中心になっていくかも?」ということだ。

【後編】大量閉店「サンマルク」好調な業界で一人負けの訳 では、サンマルクカフェ衰退の背景と、サンマルクHDとしての打開策となる業態について、より詳細に報じている。
谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。「東洋経済オンラインアワード2024」でMVPを受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

X:@impro_gashira

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