このため、特に景気が悪化した場合、若年雇用の失業率が平均以上に高まってしまうのである。
追いつめられないと改革できない?
「変革」は、つねに困難な課題である。ひとりの人間でもそうだし、組織や経済全体もそうである。白紙にデザインするわけにはいかない。昔からのしがらみや、イナーシャ(慣性)がある。多くの人が、これまでの制度に適合して生きているから、存在している組織や制度は、自らを守ろうとする。その半面で、現在存在していないものには、発言権がない。
変更をリードするのが市場の力だが、それに抵抗するのが政治の力である。かつて農業に向かっていた日本の公的支援は、いまや製造業に向かっている。
雇用調整助成金の給付は雇用保険で賄われている。雇用保険は本来の趣旨は、転職時のつなぎであり、従来の雇用を守るためのものではないはずだ。しかし、上で見たように手厚い給付なので、実態は、再就職のあてがない人に対する生活支援になっている。そして、過剰雇用を企業内に滞留させる結果になる。
しかも、雇用調整助成金を申請するのは、長期的に雇用を減らしてゆく企業である場合が多い。そうした企業に留まることを支援する結果、将来発展する企業への労働移動が阻害される。