大量閉店“銀座に志かわ”はナゼ140→50店舗に減ったのか?「1000円」でも売れた≪高級食パン専門店≫凋落の必然を社長が激白

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『膨らむ!“食パン戦国時代”』と銘打って放送した『ガイアの夜明け』(2019年5月7日放送)をはじめ、連日メディアでは「食パンの東西抗争」「新旧対決」「空前の大ブーム」などと見出しがつき、それに反応した視聴者がさらに店舗を訪れる。ある意味で、事業者、メディア、視聴者が渦のように巻き込まれ、あれよあれよとトレンドは過熱していく。

「高級食パンのブームは1社だけじゃここまで大きくならなかった」と湯川氏。表向きに見れば、“日常のちょっとした贅沢”や、“気の利いたギフト需要”として盛り上がりが謳われた高級食パンブームだが、その内実は事業者とメディアの影響も色濃くあったと振り返る。

売上40億円超から大量閉店へ

OSGコーポレーションのIR資料によれば、『銀座に志かわ』がピークに達したのは2020年頃。2021年1月期(2020年2月1日~2021年1月31日)の『銀座に志かわ』の業績は、41億4276万円(前年同期比60.1%増)と過去最高を記録。創業50周年を迎えたOSGコーポレーション全体としても、初の業績100億円超を記録し、高級食パンで節目を飾る結果となった。

一方で、食パン専門店が乱立することで、競争の激化は避けられない。特に、高価格帯で火がついたぶん、「どこでも買える」という「レア感が薄れたこと」は大きな痛手だった。

前述した通り、急速に広がったブームも一転、綻びが見え始めれば、コインの裏表のように醒めるのも速い。メディアの露出も落ち着き、コロナ禍で行列が制限されたことで、熱狂も収まりを見せた。

手のひらを返したかのように、世間では「味が単調」「原価が安いのでは?」との声も囁かれ、ロシアとウクライナ間の戦争による小麦高騰が直撃したのも逆風となった。

多くのブランドが食パンの一点突破である以上、他の商材で潰しが利か無かった。各ブランドともに経営が苦しくなり、不採算店舗の徹底を迫られた。

とりわけ『乃が美』は2023年以降、本部とフライチャイジー間の“泥沼訴訟”も取り沙汰された。経営が行き詰まったフランチャイジーが、ロイヤリティーの引き下げや、契約解除時に発生する違約金撤廃などを求め、本部を訴えたことで業界全体にネガティブな印象が付くことも避けられなかった。

御多分に洩れず、『銀座に志かわ』も約140から50店舗前後に、前出の『高級食パン 嵜本(現SAKImoto bakery)』も約40から14店舗に縮小を余儀なくされる。参入時期や拠点地域にかかわらず、各ブランド大量閉店の道を辿ったことで、業界全体の沈静は明らかだった。

高級食パンに限らず、タピオカドリンクや唐揚げ、マリトッツォなど、一過性のブームで終わる事例は多々見受けられる。話題性が先行して、メディアで取り上げられれば一気に火がつくも、必ずしも味や価格面のスペックが伴っているわけではない。

トレンドの大半が長続きしないことを鑑みれば、改めてブームとは、持ち上げられて作られる側面も大きいと実感する。

とはいえ、高級食パンのブランドは今なお存在する。大量閉店の憂き目に遭ったブランドは、現在どのような姿に変わっているのか。後編ー最盛期の3分の1に「銀座に志かわ」驚くべき今の姿ーで詳報する。

佐藤 隼秀 ライター

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さとう はやひで / Hayahide Sato

1995年生まれ。大学卒業後、競馬関係の編集部に勤め、その後フリーランスに。趣味は飲み歩き・競馬・読書

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