暮らしの中のプチ“贅沢”として、あるいは“気の利いた手土産”として、ヒットの要因が語られてきたなか、湯川氏の話からはまた違ったブームの側面が見えてきた。そして流行に乗じて店舗展開を進めた他社ブランドが、軒並み大量閉店の憂き目に遭った背景も浮かんできた。
異業種が参入しやすいビジネスモデル
高級食パンブームの発端は2013年、大阪で創業した『乃が美』とされる。卵を使わずに、生クリームや蜂蜜でしっとり甘く仕上げた生地は、そのまま食べても美味しい“生食パン”として話題を集めた。それまで食パンといえばトーストするのが通例であり、テレビで「とろける食感」「ふわふわの生食パン」と紹介されれば、物珍しさも相まって実店舗には行列ができた。
また同年には、セブン-イレブンが1斤税込250円(価格は当時)と、ワンランク上の『セブンゴールド 金の食パン』をリリースして、発売4カ月で1500万個販売の大ヒットを記録。世間的にも贅沢志向が高まっていた兆しがうかがえる。
好調が続く『乃が美』は、2018年に100店舗を展開、さらに全店の売上100億円の大台を突破する。
この前後から、他社の参入が目立ち始め、高級食パン専門店は一気に林立する。2016年には『俺の』シリーズでお馴染み『俺のBakery』が、2017年にはチーズタルト『PABLO』の姉妹ブランドにあたる『高級食パン専門店 嵜本(現SAKImoto bakery)』が、2018年には変な店名でお馴染みベーカリープロデューサー岸本拓也氏が手掛けた店舗や、前述したOSGコーポレーションの『銀座に志かわ』などが、続々と暖簾を構えた。

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