大量閉店“銀座に志かわ”はナゼ140→50店舗に減ったのか?「1000円」でも売れた≪高級食パン専門店≫凋落の必然を社長が激白

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焼けば焼くほど儲かる仕組みもさる事ながら、参入障壁が低いことも、専門店が立ち並ぶ大きな要因だった。いわゆる一般的なベーカリーであれば、菓子パンや惣菜パン、サンドイッチなど商材が幅広く、そのぶん製造工程や発注管理は複雑になりコストが嵩む。

対して、食パンの一本釣りであれば、店舗運営のオペレーションは最低限に抑えられる。従業員からすれば大量の粉をこねて、パンの元種を作る工程は重労働であるが、仮にセントラルキッチンで冷凍生地を用意できれば効率化も図れる。ある意味オーナーからすれば、利益率が見込みやすく、比較的入り込みやすいゆえ、異業種からの参入も多かった。

ブームの過熱はメディアの影響?

事実、『銀座に志かわ』を手掛けるOSGコーポレーションは、創業1970年以来、浄水器の製造販売を手掛けてきた大手メーカーだ。それまで浄水器一筋で社を築いてきた中、創業50周年が近づくタイミングで、湯川氏は新事業に乗り出そうと模索していた。

そこで、本業で扱ってきた水と、これまで培ってきた取引先とのネットワークを武器に、高級食パンのブランドを立ち上げた。

「『銀座に志かわ』が第1号店を出した2018年秋は、『乃が美』さんの約100店舗を含め、全国で高級食パン専門店は200~300店舗あったかと思います。それから2年4カ月の間で、『銀座に志かわ』は100店舗を達成し、その間に業界全体としても専門店が急増。全国で1500店舗近くあったのではないでしょうか」

続けて、湯川社長は、短期間で高級食パン専門店が急増した背景を分析する。

「当社が参入を決めた時、すでに『乃が美』は5年で100店舗近くを展開して、草の根的存在として知名度もあった。一方で、異業種からの参入で、先行者利益もない当社は分が悪い。そこで本業で培った3000近い取引先を活かして、フランチャイズ募集を行い、出店スピードを速くしてインパクトを残そうと考えた。

そこで打ち出したのが『3年で100店舗』というベンチマークです。加えて、我々が銀座に1号店を出店した際、『銀座食パン戦争』と銘打ってリリースを出しました。あえてメディアの関心を煽るような仕掛けを打ったんですね。銀座エリアにはほぼ同じ時期に『俺のBakery&Cafe』さんが歌舞伎座周辺に店舗を出した。だから“銀座食パン戦争”です。

その後2018年11月に、大阪を拠点にしていた『乃が美』さんが、麻布十番に出店して東京初進出を果たします。そこで当社も2019年1月に、あえて大阪・船場に2店舗目を出すんですね。『乃が美』さんのお膝元である本場で認められてこそなんぼだと挑戦して、開店を知らせる記者会見では『東西で食パン大戦争が起こる』と宣言したわけです。

そしたらメディアが反応して、テレビの経済番組・ワイドショー・バラエティ番組で連日、『食パン東西戦争だ!』『食パン戦国時代だ!』なんて取り上げてね。当時は『ガイアの夜明け』やらでブランドを比較する趣旨の取材が絶えなかったです。

そうした報道を起点に、折からの盛り上がりに、さらに拍車がかかって、各ブランド一気に攻勢をかけようと出店が相次いだのではないか。これが高級食パンブームの本質的な正体だと見ています。

結果的に、当社が出した『銀座食パン戦争』というリリースが薪をくべたのではないでしょうか」

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