【独自アンケート】選択的夫婦別姓“賛成過半”でも実現しないのはなぜ?改姓めぐる「暗黙の了解」「家族の猛反対」で生じた男女の分断
ただ、妻は生まれ持った氏名で仕事のキャリアを築き、その氏名で出した著作物もある。婚約直後は改姓を受け入れる様子だった妻も、改姓によるデメリットや名前への愛着について、徐々に言葉にするようになった。どちらが改姓するのか。2人で何度も話し合ったが、結論は出なかった。
結婚後に新しい仕事を始める予定だったケンイチさんにとって、改姓による仕事上のデメリットは多くなかった。だが周りの目は気になった。ケンイチさんは地方出身。男性であるケンイチさんが改姓したと知れば、周囲は詮索するだろう。
「将来地元に戻る可能性も考えると、“普通でない人”とレッテルを貼られるのは避けたい気持ちがありました」。事実婚は法的保護を受けられないことや、堂々と『結婚した』と言いにくいことから選択肢にはなかった。
改姓は子どもを売りに出すような感覚
決定打となったのは父親の思いを打ち明けられたことだった。
ある日、父親は「息子が改姓するということは、お金がなくて子どもを売りに出すような感覚だ。ケンイチにそのつもりはないんだよな」と確認してきた。聞くと、実際に昔はそういうことがあったという。「衝撃を受けましたが、父の思いも理解はできました」。
父親は戸主としてイエの責任を果たしてきた。先祖から引き継いだ土地を苦労しながら守り続け、娘や孫の面倒も見ている。
ケンイチさん自身は、妻とは対等なパートナーだと考えている。明治時代に始まった夫婦同姓制度に歴史的な基礎があるとも思えない。それでも、心配する父を説得して自分が改姓する決断はできなかった。スムーズに結婚を進めるため、妻が改姓した。
「婚姻届を提出した日、妻がショックを受けている様子だったことを今でも覚えています。入籍日は2人にとって喜ばしい日ではありませんでした」
妻はその後しばらく不安定な状態だったという。改姓に対する妻の葛藤について、自分の両親には伝えられていない。「改姓させた側として、妻の両親のケアには一層気をつけないといけないと思っています」。
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