「自ら動かないといけない」という危機感、台湾でますます顕著となる女性の政治参加から見る台湾政治の切実な状況

アメリカのヴァネッサ・ホープ監督が制作し、2023年に発表されたドキュメンタリー映画『Invisible Nation』(『見えない国家』)は、台湾初の女性総統である蔡英文氏を在任期間中に密着取材した作品である。本作は、台湾が国際的に孤立しながらも、民主主義の維持と中国からの圧力にどう向き合ってきたかを描き、複数の国際映画祭で上映され話題となった。
2024年に蔡氏が総統を退任してからも台湾では地政学的に厳しい状況が続いている。その中で台湾内政では新しい動きが出ており、女性の政治参加がより顕著になっている。7月26日には24名の野党の立法委員(国会議員)を解職(罷免)するか問うリコール投票が行われるが、この投票実施が決まるまでも多くの女性が声を上げた。
社会運動で目立った存在感
今回のリコール投票が行われるきっかけは、2024年に行われた国政選挙の結果である。この選挙では、民進党の頼清徳氏が総統に当選して民進党政権の継続が決まったものの、立法院(国会)では同党が過半数を獲得できず少数与党に追い込まれた。
議会で多数派となった野党の国民党と台湾民衆党は、議会運営を通じて行政と司法を強く牽制する動きに出た。これを野党による立法権の乱用だと考えた市民の中から、野党への抗議に立ち上がる人たちが多く出た。
複数回にわたり数万人の人々が立法院(国会)周辺などに集まって抗議活動が行われた。これは「青鳥行動」と呼ばれ、その後の野党議員を解職しようとする市民団体の動きにつながっていった。そして2025年に入り、各選挙区で野党議員の解職を求める署名活動が始まり、民進党もそれに同調し、7月のリコール投票決定につながった。
これらの活動・運動の中心的な担い手に女性が多くいた。かつて台湾の社会運動では男性が主導権を握ることも多かったが、現在は女性の存在感がより顕著である。すでに立法委員(国会議員)の女性比率は4割を超え、アジア諸国の中で最も高いが、女性の政治参加はますます強まっている。
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