「自ら動かないといけない」という危機感、台湾でますます顕著となる女性の政治参加から見る台湾政治の切実な状況
2024年の立法委員選挙では「子育てしやすい社会」を掲げた「欧巴桑(おばさん)連盟」と呼ばれる小政党が、議席獲得はできなかったものの比例代表の政党別得票数で第5位に躍進。台湾の女性たちから自ら「行動せざるをえない層」が出てきているといえる。
野党議員の解職を求める運動では、学生や若い母親、地域活動家、医師や弁護士などさまざまな背景を持つ女性たちが参加。彼女たちに共通して見られたのは「子どもたちの未来のため」「社会の劣化への危機感」といった切実な動機である。
「自分たちが動かなければ」という危機感
台湾北部の新北市出身の琪琪さん(36歳)は、保守的な国民党支持の家庭で育ったが、「青鳥行動」に参加。「私が動かなければ、誰がやるのか」という強い責任感から、国民党議員の罷免運動をボランティアの中心的な一員として始めた。
一方、基隆青年陣線の創設メンバーである黄欣儀さん(33歳)は、文化保存や地域再生、公民教育に取り組む中で、若い母親たちが子どもの将来を案じる声に触れた。そこから彼女自身の中に「黙っていてはならない」という強い動機が生まれ、罷免運動に参加した。
また、弁護士の嚴心怡さん(43歳)は、学生時代から司法改革や人権問題に関心を持ってきたが、母親となってから行政に多くの不備があることにより気づいた。ゴミが処理されないまま放置されている事態や建設業者による歩道占拠といった問題を行政が解決できていない現状に憤りを感じるようになった。「自分の子どもが安全で清潔な環境で育てられないなら、母としての意味があるのか」との問いが、行動につながった。
女力護國計畫の一員で医師でもある嚴雯馨さん(45歳)も罷免運動の最前線に立った。彼女の動機は単なる個人的関心にとどまらず、「私が声を上げなければ、他の人も沈黙したままだ」という思いからだった。特に、台湾に対する中国の政治的圧力や浸透工作に対する警戒感が、彼女の行動を後押しした。
彼女たちに共通するのは、単なる一時的な感情ではなく、政治に対する思いや疑問から生まれた社会に対する深い関心と持続可能な市民活動を目指す考えだ。かつて行われた男性中心によるヒエラルキー型の社会運動とは異なる水平的で協働的な運営スタイルを志向している。
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