トランプ大統領の命名の妙を感じさせるもうひとつの事例が、注目を集めた「ひとつの大きく美しい予算」(One Big Beautiful Bill Act)である。
100点満点ではないが「OBBB法案」も成立へ
当初はトランプ氏が口癖のように議会に対して求めていたフレーズが、法律の正式名称になった。略して「OBBB法案」。覚えやすいし、いかにもトランプ大統領好みの派手さが印象づけられる。
現行の2025年度予算は、与野党が揉めに揉めた挙句、前年度並みの暫定予算を9月末まで延長することでケリがついた。確かに「美しい」顛末ではなかった。
そこで今年10月1日から始まる2026年度予算では、政策の優先順位を明確にし、手練手管を抜きに与党が一丸となって成立させたい。そのための法案は5月22日にわずか1票差で下院を通過し、さらに7月1日には上院でも可決された。こちらは共和党内から3人の造反者が出て賛否は50対50となり、最後は上院議長を兼ねるJ・D・ヴァンス副大統領の1票で決まるという薄氷の勝利となった。「7月4日の独立記念日までに」という締め切りもまた、ギリギリセーフとなった。
今回の予算には、待望久しい減税が盛り込まれている。まず、今年の暮れに失効する「2017年トランプ減税」(個人向け税制優遇措置)を恒久化する。これをやらないと、来年1月には皆が増税になってしまうので、これはどうしても必要なところである。
加えてトランプ大統領が、昨年の選挙戦で公約した「チップ非課税」「残業手当非課税」などを新たに盛り込んだ。ただし2028年末までの時限措置であり、法人減税も見送られたので、画竜点睛を欠くうらみはありそうだ。
減税の財源としては、低所得層向けの公的医療保険「メディケイド」や食料支援の「フードスタンプ」の予算を削減する。またバイデン政権が導入したEV購入支援や再エネ優遇策などを打ち切り、大学授業料ローンの軽減策なども節減して財源に転用する。低所得者層が犠牲になると、この辺りは非難の声がかまびすしい。
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