そして今回、「12日間戦争」(Twelve-Day War)というトランプ大統領の命名は、「その倍」という意味が込められているのだろう。言うまでもなく「12」という数字は、「イエス・キリストの12使徒」とか「イスラエルの12部族」など、神聖な秩序の数字という意味を帯びている。
こういう宗教的なシンボリズムは、アメリカ国内の「福音派」の心には深く刺さっているのではないだろうか。日本じゃ誰もそんなこと気にしないけどね。
真面目な話、爆撃直後の6月23日からNYの株価は一気に上げた。7月3日にはS&P500種指数やナスダック総合指数が史上最高値を更新。NYダウ工業株30種平均も4万4000ドル台後半と、トランプ2次政権発足直後につけた最高値に接近している。「中東の地政学リスク」が思ったよりも早く片付いたので、買い安心感がでてきたのであろう。
トランプ大統領の強気復活で日本政府はとばっちり?
もっともこれには副作用もあって、トランプ大統領が急に関税交渉で強気になってしまった。そもそも4月2日に相互関税を打ち出した際に、マーケットが大荒れになって「トリプル安」(株安、ドル安、債券安)になったから、急きょ「国別の上乗せ関税は90日間延期」にしたのである。
その締め切り、7月9日は目の前に迫っているけれども、株価は元に戻っていて、雇用やインフレのデータもまだそれほど悪化していない。「だったら関税を上げても問題ないだろう」とトランプ大統領に言われたら、誰も反論できないのである。
とばっちりを受けているのが日本政府である。おそらく交渉窓口のスコット・ベッセント財務長官は、「あそこは7月20日の参議院選挙を過ぎると、石破茂首相が退陣してしまうかもしれない。その前にとっとと終わらせて、英国などに続く妥結国にしてしまえ」くらいに考えていたことだろう。ところがどうやら、早期妥結の機会が遠のいたようである。
言葉を替えれば、トランプ大統領が「日本いじめ」をする余裕ができちゃったということだ。もうちょっと市場が荒れていて、アメリカ国内の経済指標も悪化が始まって、中東やウクライナがきな臭い状態で、米中間の対立が先鋭化していれば、対日交渉を終わらせようという機運も高まったのであろうが……。
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