「12日間戦争」「ひとつの大きな美しい予算」…あまりに絶妙すぎる「トランプ大統領ネーミング術」の謎を解く

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「今回の攻撃により、イランの核開発は致命的な打撃を受けた」

「逆に米軍が受けた損傷は皆無である」

「しかも戦争はあと腐れなく終わった」

「さすがはトランプ大統領!」

そんなメッセージを送りたいわけである。もうちょっと言えば、「バイデン(前大統領)だったら、きっと泥沼化していたぞ!」とも付け加えたいところであろう。

かつての”Six-Day War”の含意とは?

それだけではない。中東ではかつて「7日間戦争」があった。1967年、イスラエルがアラブ連合軍(エジプト、シリア、ヨルダン)に対して、圧倒的な軍事的勝利を収めた第3次中東戦争の通称である。わずか1週間でシナイ半島、ガザ地区、ヨルダン川西岸、東エルサレム、ゴラン高原を占領してしまった。それくらい圧倒的な勝利であった。「12日間戦争」というネーミングは、当然のことながらその劇的なイメージが下敷きになっている。

さらに味わい深いのは、英語では「7日間戦争」のことを”Six-Day War”と呼ぶのである。この戦争、始まったのが6月5日で終わったのが6月10日なので、確かに「6日間戦争」である。日本のメディアが「7日間」にしてしまったのは、たぶん「そっちのほうが、響きがいいから」みたいなくだらない理由であったものと拝察する。

しかるに「6日」という期間は、旧約聖書で神が天地を創造した日数に重なる。神は7日目には休まれたので、それが安息日ということになった。今日、1週間が7日間となっているのは、この聖書の記述に起源がある。

つまり「7日間戦争」(Six-Day War)という言葉には、単なる電撃作戦の成功というにとどまらず、宗教的・象徴的な正当化という意味合いがある。つまりイスラエル軍の勝利は神の思し召しであり、占領地を返す必要などない!ということになる。この名称を発案したイスラエル当局は何ともズルい。いや、巧妙極まりないと感心するほかはない。

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