配当額は全体的に拡大しています。2015年度の配当総額は過去最高の2014年度を上回り、10兆円超となる見通しです。その背景には、企業業績が好調に推移していることもありますが、株主への配慮やROE目標の達成といった要因も重なっていると考えられます。
5つめのは、自社株買いをすることです。企業が市場に流通している自社株を買うと、その金額は、純資産の部にある「株主資本」の「自己株式」にマイナス額として計上されます。なぜマイナス額になるかといいますと、自社で買った自社株は、ひとまずそのまま保有し続けるのが一般的ですが、将来的には消却してしまうことを前提としているからです。「消却」とは、文字通り「消し去ってしまう」ことです。
こうして自社株買いをしますと、次のようなことが起こります。一つは、株主資本(自己資本)の減少。二つめは、1株あたりの純利益が増加することです。三つめは、1株あたりの純利益が増えることによって、株価が上がりやすくなり、リターンも増えるということです。
つまり、投資家から見ると、自社株買いは非常にありがたいことですし、企業にとってもROEが高まるというメリットがあるのです。今、多くの企業が自社株買いを行っているのは、これが理由です。
過剰な自社株買いは問題
ただし、問題もあります。過剰に自社株買いを行うと、自己資本が減って負債の比率が増えるわけですから、会社の安全性を示す指標「自己資本比率」が下がります。つまり、会社の安全性が損なわれてしまうのです。
さらには、自社株式を買うために資金を使いますから、現預金が減少します。資産を売却して現預金を調達することもあります。これがエスカレートすると、借入をしてまで自社株買いを行うケースも考えられますが、その場合は当然、負債が増えてしまいます。
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