しかし、「早くROEを高めたい」という短絡的な思考で人件費を削減すると、非正規雇用者ばかりが増えたり、働く人に過度な負担がかかることもあります。経営の大きな目的の一つは、「働く人を幸せにする」ことです。コストを削りすぎてしまうと、経営の本質と自己矛盾を起こすことにもなりかねません。
二つめは、すでに十分な収益力をもつ企業を買収(M&A)することです。たとえば、日本ペイントホールディングスは、2014年にアジアの塗料事業会社8社を買収しました。今後も事業や企業の買収を進めていこうと考えています。この買収によってどんなメリットがあるかといいますと、まず、大幅なコスト削減です。4年後には130億円以上の削減ができると見込まれています。
もう一つは、8社を子会社化した時の評価益が 純利益を押し上げ、一時的にROEが高まったということです。日本ペイントの2014年度のROEは53.8と、抜群に高い数字になりました。中長期的に維持できるかどうかが課題ですが、買収によって高まったことは間違いありません。
この話と関連しますが、すでに儲かっている子会社を完全子会社化することで、ROEを高めるという手法もあります。2015年6月末、ソニーが26年ぶりに4400億円もの資金調達を行うと発表しました。
これは、稼ぎ頭であるソニーフィナンシャルホールディングスを完全子会社化するための資金ではないかとの憶測が広がっています。今、ソニーは、ソニーフィナンシャルの株式のうち60%を保有しています。そこで持株比率を100%まで上げて利益をすべて取り込めば、親会社であるソニーはROEを10%程度まで高めることができると考えられているのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら