怒りっぽい職場のあの人は「実は鬱症状」かもしれない メンタル不調の兆候を“いち早くつかむ”ために知っておきたいこと

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

感情制御も難しくなり、コミュニケーションが円滑にできなくなります。そして、さらに周囲からの印象が悪化し、職場での立場がより厳しくなる悪循環に陥ります。

このように一度大きく業務遂行能力が低下すると、環境に働きかけずに本人の努力だけで悪循環から逃れるのは非常に困難です。

追い詰められると脳の働きが落ちる

前節のような状況に陥ると、本人はなんとか状況を打開しようともがきます。

一生健康に働くための心とカラダの守り方
『一生健康に働くための心とカラダの守り方』(かんき出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

例えば栄養ドリンクを大量に摂取して夜遅くまで働き、挽回しようとするのです。

しかし、この「量でカバーしようとする」「一発逆転を狙う」思考がすでに解決を難しくしています。

そもそも、今の状況になった原因は、周囲に相談せずに、自分だけで困難な状況を打破しようとしたことです。もともと周りに相談ができる人であれば、こうした深刻な状態に陥ることは稀です。

つまり、もともとの特性として、「他人に相談をするのが苦手」「他人に頼ることに抵抗がある」人なのです。

今の状況は、体調も悪くなり、仕事でも追い詰められています。人間は追い詰められていたり苦しい状況であるほど、本来の性質が強く現れます。

「他人に頼らず、一人で解決しようとする」性質が、今まさに表現されているのです。

この段階になると、今まで好きで行っていた趣味や運動の頻度が極端に減ったり、あるいは全くできなくなったりするのも特徴的です。

うつの症状の一つに「意欲の低下」があります。運動や趣味が億劫になり、「疲れているので今日は休んだほうがいい」と考えてしまいがちです。しかし、こうした判断を続けることで、リフレッシュの機会を失い、脳の疲労回復のチャンスを逃してしまいます。

趣味や運動の時間を取ることで、脳が「悩みの回路」から一時的に離れ、リフレッシュする効果があるためです。

すなわち、「休んだほうがいい」と思って下した判断が、結果的に脳の疲労をさらに悪化させるマイナスの選択になっているのです。

周囲の人や自身のメンタル不調の兆候をいち早くつかみ、心身の健康を保つために適切な対応をとるようにしましょう。

吉田 英司 日本医師会認定産業医、心療内科医

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

よしだ えいじ / Eiji Yoshida

株式会社ベスリ代表取締役。研修医修了後に、外資系経営コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーに参画。主に、中期計画の策定、新規事業戦略、事業再建などのテーマでコンサルティングを約3年経験。トップマネジメントに向けた戦略の立案と共に、現場社員への実行支援に精力的に取組む。その後、シャープ、ルネサス エレクトロニクス、上場外資IT企業、外資化学メーカー、東京オリンピックパラリンピック組織委員会などで産業医を歴任し、社員個人の健康支援だけでなく、全社的な健康経営や健康施策の立案と推進を行う。産業医や心療内科医として働くかたわら、日本のビジネスパーソンの可能性を最大化するために株式会社ベスリを設立し、企業の産業保健活動支援やリワークでの復職支援を行なっている。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事