怒りっぽい職場のあの人は「実は鬱症状」かもしれない メンタル不調の兆候を“いち早くつかむ”ために知っておきたいこと

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そう考えると、上司がミスを指摘し、ましてや受診を促すということは、すでに相当のレベルでミスが発生しているか、それが長期間続いている可能性が高いと考えられます。

仕事のミスが増えるということは、ワーキングメモリが低下しているサインです。

このパターンで受診する際に、他に多く訴えられる症状としては、

・人の話を聞いても全く頭に入ってこない
・何度同じことを聞いても忘れてしまう
・同時に2つのことができない

といった内容が挙げられます。

これらは、まさにワーキングメモリの低下による影響です。

主治医として話を聞いていると「ああ、もうワーキングメモリが低下して職場でミスをして怒られているんだな。この状況のまま仕事を続けても、悪循環に入り、さらに仕事の効率が落ちて、また怒られてしまうな」と判断することが多々あります。

このような場合、短期の療養を取るか、あるいは仕事の負荷を下げるよう上司に相談できませんか、と提案をします。

すでに冷静な選択ができない状態に

しかし、この提案をすんなり受け入れてくれる人は多くても3割くらいで、残りの人は「今休むわけにはいかないんです」「みんなに迷惑をかけるわけにはいきません」と返答します。

そう考えることにはとても共感できます。

しかし、ここで重要なのは、「1週間休んで体調が回復し、ワーキングメモリが復活して、その後安定して働き続けられるのか」、それとも、「今の形で2カ月ほどはなんとか働けるものの、その後急に長期間の療養が必要になり、いきなり労働力がゼロになるのか」という選択の問題です。

冷静に考えれば、後者のほうが職場全体への影響は大きく、短期的な休息を取るほうが合理的な判断であることは明らかです。

しかし、すでに判断力が低下している状態では、そのような冷静な選択ができないのが現実です。

その結果、睡眠薬や抗うつ薬を処方し、治療と並行しながら今まで通り働く選択をしてしまいます。しかし、想定していた悪循環は高い確率で起こります。

ミスが目立つ期間が長くなると、周囲からの信頼が低下します。その結果、周囲の当たりが強くなり、それをプレッシャーとして受け止めることで、さらにワーキングメモリが低下します。

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