なぜ「クレヨンしんちゃん」はアジアで愛されるのか? 不朽のキャラクターを生んだ臼井儀人という作家の魅力
だが2000年前半に劇場版が15億円を超え、ある程度安定はしていったが、20周年を目の前に臼井氏が登山中の事故で急死(2009年)。週刊誌連載としては2010年で絶筆となり、コミックスもここをピークに急減、これ以降国内は劇場版とゲーム化だけが残っていく。
クレヨンしんちゃん2200億円経済圏
2014年以降スタジオジブリの作品が途切れがちになる時期から、クレしんの劇場版は20億円を超えるようになり、コロナ期にNintendo Switch用ソフトとして発売された「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』」が異例の累計50万本ヒットのゲームとなり、2023年の3D映画「超能力大決戦~とべとべ手巻き寿司~」は遂に31作目にして史上最高23億円を7週目で超え、24.7億円を記録。
国内で関連本を含めて7000万部、海外では3000万部という数字はともに双葉社にとって史上最大の数字になっている。

臼井氏は漫画家歴が長かったわけではなく、サラリーマン生活も経ているため、社会人としての経験値や知見が生きた内容を素材にしている。画力が高かったとはなかなか言えないが、それでいてクセが強くはなく多くの人に愛される柔らかな線を描く。
特に光るのは、そのキャラクターづくりである。脇役にも愛情深く、1回きりで使い捨てされることは少なく、名前も含めて特徴的な春日部市民が沢山登場する。編集の修正要求にもよく答え、ほとんど1人でずっと描き上げていた。アニメ側の意見も尊重し、非常に関係性良く漫画とアニメが並行して進んでいたという。
1996年に、新キャラとしてしんのすけの妹にあたる「ひまわり」を誕生させて4人家族にしたのは出版側だけでなく、アニメ側からの要請もあったという。まだキャラクターが固まる前で、アニメ側も自分たちの思いをのせてしんのすけに負けないキャラをと作っていき、それが漫画にも反映されていった。
臼井儀人氏はチームワークの作家だった。それがこのクレヨンしんちゃん30年史を築き上げた礎であり、原作者が早逝してはや16年が経つが、それでもなお物語が創り続けられている根源なのだと思う。
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