自動車デフレの具体例として、徐氏はBYD(比亜迪)のベストセラーPHV「秦PLUS DM-i」の価格の推移を示した。そのメーカー希望価格は2022年には13万4000元(約269万円)からだったが、2024年には8万6000元(約172万円)から、2025年5月には7万5000元(約150万円)からに引き下げられた。

徐氏の分析によれば、自動車デフレにさらに拍車をかけているのが、中国政府が景気テコ入れのために導入した乗用車の買い換えを奨励する補助金だ。2024年4月の開始当初は個人が旧式のマイカーを廃車にして新車に買い換える場合のみが対象だったが、同年8月からはマイカーを下取りに出して買い換える場合にも補助金が支給されるようになった。
乗用車の買い換え補助金は2025年も継続されており、それが中国市場の新車販売台数の増加を支えている。
低価格車ほど恩恵大きく
問題は、買い換える新車の価格水準にかかわらず、補助金の支給額が一律であることだ。具体的には、マイカーを廃車にしてEVまたはPHVに買い換えた場合には2万元(約40万円)、マイカーを下取りに出してEVまたはPHVに買い換えた場合には1万5000元(約30万円)が支給される。
言い換えれば、新車価格が安ければ安いほど、補助金支給によるお買い得感が大きくなる。例えば、マイカーを廃車にして10万元のEVに買い換え、2万元の補助金を受け取れば、車両価格が2割引になったのに等しい。

徐氏によれば、メーカー希望価格が10万元以下のEVおよびPHVの販売台数は、(補助金支給が始まる前の)2023年には前年比の増加率がわずか2%だった。ところが、2025年1~5月には前年同期比の増加率が84%に達した。
「客観的に見て、買い換え補助金の恩恵は低価格車ほど大きい」。徐氏はそう述べ、金額一律の補助金が新車の平均販売価格の押し下げ要因になっているとの認識を示した。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は6月15日
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