トム・クルーズが「日本の母」と慕う”字幕翻訳家” 戦時下で「英語禁止」、デビューまで「20年」・・・ 《レジェンド・戸田奈津子さん》の生き方

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――トム・クルーズさんも、そういう意味では似たタイプですね。

そう。還暦を過ぎて、あのアクションですよ? 彼は自分でプロデューサーもやって、自分が稼いだお金で作っている。だから誰にも文句を言わせない。任せるなんてことは絶対しない。とにかくお客さんを楽しませることを第一に考えている。だから、それを絶対に曲げないわね。

『ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング』
戸田が字幕を担当した『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』は全国公開中(C)2024 PARAMOUNT PICTURES.

――ところで戸田さんは先日、大谷翔平選手の試合を観戦してニュースになっていました。

あれは本当に意味がわからなかった。何であんなに騒がれるのか。皆さん、SNSで何を見てるのか。時間はもっと有意義に使ったほうがいいですよ。

それより1ページでも本を読んだほうがいい。映画を1本見たほうがいい。私は勉強が好きじゃなかったけど、本や映画からいろんなことを学んでいたし、なにより楽しかった。それが私の考えです。

流行りの「倍速で映画視聴」は論外?

――最近は「タイパ」という言葉もあって、映画を倍速で見たり、本のあらすじを読んだりして、分かったような気になることも多いですが。

そんなの、論外です。あらすじだけ読んで“分かった気”になるなんて。そんなの、自分がどれだけ貧しい人間か分かっていないんです。

――ちなみに、戸田さんが若い頃の“息抜き”とは、どんなものだったんですか?

やっぱり映画ですね。仕事とは別に、たくさんの映画を見ていました。音楽会に行ったり、旅行したりもしましたよ。でも、結局「字幕をやりたい」という気持ちが一番強かったから。

通訳の仕事もやりたくてやったわけではなく、他にやれる人がいなかったからやるしかなかった。本当に逃げ場がなかったから。でもそうやって通訳をやっていたことがコッポラ監督との出会いにもつながった。

結果論ですけど、振り返ればすべてがつながっていた。計算してやったわけじゃないですよ。振り返れば、他のこともそれにつながっていたんでしょうね。

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