営業なのに「電話が怖い…」、若者に広がる「電話恐怖症」のリアル。電話が苦手な部下に上司はどう対応すればいいのか?

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では、なぜこれほど多くの若者が電話を恐れるのか? 筆者がさまざまな企業で担当した新入社員研修等で実際に若者にインタビューしたところ、主に以下の3つの要因が浮かび上がってきた。

(1)リアルタイム性への不安

電話がかかってきたらその場で即座に応答し、的確に返答しなければならない。営業活動によるアポ取りは、さらにハードルが高い。想定外の反応が返ってくることが多いからだ。

「自分の知識で正しく回答できるか不安」「対応をミスするのではないか」……。若者たちは、このリアルタイム性に不安や抵抗感を覚えるようだ。

(2)圧倒的な経験不足による自信のなさ

私のような50代とまったく違うのは、若者たちがメールやチャット中心のコミュニケーションに慣れ親しんで育ってきた、ということだ。

LINEリサーチの高校生調査によると、週に1回以上友人や家族と通話する高校生は女子で4割強、男子でも5割強にとどまる。女子中高生の約15%は「電話はまったくしない」とのこと。

注意すべきは、電話を使う割合ではなく、電話をする人の割合ということだ。ここまで「電話を使ってコミュニケーションをとる人」の割合が減っていることに驚きを覚える。

免許は持っているが、ほとんど車を運転しない若者に「明日から毎日、車で営業活動をしてもらう」と指示するようなものか。

(3)言葉の責任感に敏感

SNS時代の若者は「言葉の責任感」が強い傾向がある。「思いもよらない一言がネット上で炎上する社会」で育ったため、何を言っていいのか異常に気を使うという。

実際に、このようなことが起こった。ある新人営業がお客様の現状を尋ねていた際、「そのやり方では、ちょっと古くさいですから、改善されたほうがよいかと……」と口にしてしまった。

そのとたん、相手は「古くさいだと!」と声色を変えた。そして次のように返されて、取引が中断されてしまった。

「あなたは『古くさい』と言うけど、このやり方で当社は売り上げを順調に伸ばしてきたんだ。とても気分が悪い」

それ以来、メール以外で、顧客対応はしたくない、とこの新人営業は言い続けている。

ちなみに「作業が中断される」という理由で電話嫌いになったという声も多くみられるが、これはあくまでも“効率性”の話。電話恐怖症になる理由としては適切ではない。そう判断して、本記事では割愛した。

電話代行のプロで活躍する若者もいるが…

電話が怖いという「電話恐怖症」に関する話題は、実のところ2020年ごろから徐々に広まりつつあった。その傾向と関係があるかは不明だが、テクノロジーを活用した電話営業支援サービスは普及しはじめている。

効率的に架電したり、会話内容をデータベース化するシステムは20年以上も前から存在する。私がシステムエンジニアだった時代、コールセンターのシステム開発に携わっていたのでよく知っている。

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