最大市場インド攻略へ苦闘する農機のクボタ

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クボタがインドに本格参入した09年は、益本社長の社長就任年でもある。当時、益本社長は牧歌的な社風に強い危機感を抱いていた。「リーマンショックのとき、本来なら(業績が)すとーんと落ちるべきところが、(製品の特性上)落ちなかった。だから『今までどおりやってりゃいい』と考える社員が大多数」。

「今までどおり」はたとえば生産体制である。海外売上高比率7割の機械事業の海外生産比率はわずか5%(当時)。国内工場で造った機械を北米や欧州、アジアへ船便で送っていた。輸送コストがかさむうえ、新製品の投入が遅れることもあったが「おかしいと思っている人は一人もいなかったんじゃないか」。

益本社長はおっとりした社風をぶち壊し、挑戦を始めた。09年以降、北米、タイへの生産拠点新設を決定。今年2月にはクボタ初のM&Aで北欧の農作業器具会社を買収した。「挑戦して失敗したら変えていけばいいのに、まだみんな不安がっている。だから新たな挑戦をするのが私の責任」。緒戦は失敗したインドからしっぽを巻いて逃げるのではなく、次の挑戦を試せばいい。

ここに来て、インド戦略も切り替えた。人間の運搬を前提とした大型トラクターは「マヒンドラに任せとけ」(益本社長)。新たな戦略製品は“市場がない”はずの田植え機だ。「(市場が)ないならこっちが作ってあげなきゃダメ」。

今、営業部隊は月に数度、農村へ足を運び、田植え機のデモンストレーションを行う。林氏曰く、「100人くらい集まってきて目を輝かせて見ている。収穫量が2割上がると説明すると『すごい機械だ』と」。

さらに「賃植え屋」の育成にも注力する。賃植え屋とは、融資を受けて農機を購入し田植えの代行をする、主に富裕農家の個人事業者。まだ数は少ない賃植え屋だが、低賃金の農民に頼らず、収穫量が増える田植え機を買う可能性が高い。

田植え機使用の前提となる「育苗指導」にも取り組む。連日農家に通い、根気よく指導を続ける。「新しい市場を作るにはメーカーがそこまでやらなくちゃ」(益本社長)。

インドの農村に溶け込み、ブランドを確立するには時間がかかる。今やクボタの独占市場となったタイも最初の進出は30年前。「インドでも最後に笑う」。益本社長はじっくりとインド攻略に取り組む考えだ。


クボタの業績予想、会社概要はこちら

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(前野裕香 =週刊東洋経済2012年3月17日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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