消費者や広告主の不満が多いのに、なぜXなどのソーシャルメディア企業の市場支配力は絶大なのか。ノーベル賞学者スティグリッツによる解説
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X(旧ツイッター)は、あれだけの不備や欠陥を抱えていながらも、なぜ支配的なメディアとして居座り続けられるのか?(写真:kyokyo/PIXTA)
X(旧ツイッター)など一度支配的となったプラットフォームは、広告主や消費者から不満の声があがっても、同業他社に取って代わられることはなく市場支配力を維持し続けている。いったいなぜそのようなことになっているのか? その理由をノーベル賞経済学者のスティグリッツ教授の新刊『スティグリッツ 資本主義と自由』の中から一部抜粋・編集の上、お届けする。
ソーシャルメディアの市場支配力
ソーシャルメディア企業が莫大な利益を享受している点から見て、競争が欠如しているのはあまりに明白である。通常であれば、それほどの利益があると新規参入する企業が増え、いずれは利益が分散される。それが起きていないのだ。
たとえば、イーロン・マスクがツイッターを買収し、これからはコンテンツの監視を行なわないと宣言すると、広告主たちはツイッターから離れた。自社の広告が、不快感を与える投稿や悪質な投稿の隣に現れるのを嫌ったからだ。利用者たちも声高に不満の声をあげ、別のプラットフォームに乗り換える議論もあった。
ところが、X(旧ツイッター)は、あれだけの不備や欠陥を抱えていながらも支配的なメディアとして居座り、政府関係者や企業の役員、公共機関の職員までもが、それをコミュニケーションに利用している。
ツイッターに取って代わろうとメタが多額の資金を費やして投入したスレッズでさえ、Xに対する大々的な不満があったにもかかわらず、限定的な成功しか収めていない。
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