消費者や広告主の不満が多いのに、なぜXなどのソーシャルメディア企業の市場支配力は絶大なのか。ノーベル賞学者スティグリッツによる解説

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プラットフォームは、蓄積した情報によりライバル企業以上に消費者へのターゲティング能力を向上させることで利益を増やし、ライバル企業に対する競争上の優位性を高めている。グーグルやアマゾンといった大手IT企業は、他社よりも多くの情報を持っているため、その情報優位を利用すれば、直接販売でも広告でも競争力を高められる。

だが、情報を蓄積するのは、一企業の利益にはなるかもしれないが、二重の意味で非効率的である。情報には社会的価値があるのに、それを溜め込むようなことをすれば、そのプラットフォーム以外の人がその情報を十全に活用できなくなる。

その一方で、情報を蓄積したプラットフォームは、市場支配力を獲得する。データはほとんど値のつけられないほど貴重な資源であり、とりわけ人工知能にとって重要な意味があるのに、そこには悪循環がある。

大手プラットフォームはより多くのデータをかき集め、それによりライバル企業に対する競争上の優位性を手に入れるばかりで、必ずしもほかの人々の役に立とうとする意思も能力も示していない。その結果、いま述べたように市場支配力が高まっていくばかりとなる。

不完全競争がもたらす特殊な弊害

もちろん、情報の効率的な活用と、競争を抑制する情報の蓄積と、プライバシーに関する懸念との間には対立関係がある。私たちがプライバシーを懸念する理由の1つは、すでに述べたように、情報を提供すれば、それを悪用されるおそれがあるからだ。標準的な競争市場では、特定の消費者の選好に関する情報に価値はない。

だが市場支配力が存在する現実の世界では、その情報は企業にとって莫大な価値があるものであり、それを使って利益を著しく増やすこともできる。

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