今夜復活「夜もヒッパレ」伝説の演出家が語る《往年の歌手にヒットソングを歌わせるだけの番組》があんなにも輝いた納得の理由
「音楽で遊ぼう」というコンセプトで、ビジーフォーを入れて、逸見さんとゲストでトークしながら、「こんな曲があった」と言うとビジーフォーのモト冬樹がギターを弾いて、グッチ裕三がハモリをつけたりしてみんなで歌うみたいな、その場でいろんな展開ができる音楽番組を考えたんです。
途中から司会に美川憲一(ご意見番)と杉本彩(アシスタント)を加えて、ちょっと“夜”っぽくしたんです。逸見さんだけがちょっと浮いていて、その分、逸見さんが頑張っている感じの画が面白かったんです。
やっぱり、この番組が成功したひとつの要因は、逸見さんが音痴だったこと(笑)。もちろん僕はそんなこと知らなかったんだけど、歌わせたら音をハズすんですよ。でも逸見さんは平気なの。そこが憎めなくて素敵なんですよね。
逸見さんがガンで亡くなったのはショックでしたね。あんな人はなかなかいない。最期まで自分のスゴさに気づいていないんじゃないかというくらい謙虚な人でした。テレビが好きでしょうがないまま、燃えつきた人。テレビの歴史の中でも稀有な存在でした。
三波春夫にヒップホップ、和田アキ子にアイドルメドレー
『夜も一生けんめい。』では、ゲストには普段と違うことをやってもらいました。たとえば、三波春夫さんには、ヒップホップに挑戦してもらった。普通、三波春夫さんにそんなこと頼まないじゃないですか。でもこっちは純粋な音楽番組なんかやったことがないから、やったらオシャレに映るんじゃないかな、って思って。
そしたら「いいですよ」って。「え、いいんですか?」って頼んだほうがびっくりしちゃう。やっぱり一流の人は懐が深い。めいっぱい頑張ってくれて、最後は花吹雪の中、大拍手ですよ。「楽しいね、こういう番組」と言ってくれて嬉しかったですね。
プロデューサーの小杉さんと一緒にゲストに提案しに行くんですよ。北島三郎さんには、黒人のフィーリングがあるんじゃないかってゴスペル中心の歌メドレーを提案したり、「幸福の科学」入信騒動があった小川知子さんには、「幸福(しあわせ)」の歌メドレーを歌ってもらったり、和田アキ子のマネージャーに彼女が一番苦手なものがアイドルだって聞いたから、アイドルメドレーを歌ってもらったりしました。
加山雄三さんもそう。僕は学生時代から加山さんがアイドルで憧れていたんですよ。曲も大好きなんだけど、加山さんの歌って、コード進行が似てるじゃないですか。それで加山さんの持ち歌5曲を同じ伴奏で、同時に5人の歌手に歌わせるという企画を考えたんです。憧れの人だし、どうなるかなって提案したんですけど、
「面白いね、やってみようよ」
加山さんは快諾してくれました。みんなテレビで揉まれて育った人たちだから、テレビで遊ぶことが好きなんですよ。でもスタッフが信頼できるか、ってのもありますよ。一つ間違えたら危険ですから。