また、日本は2010年代以降、レアアースの中国依存を段階的に低減し、オーストラリアやインドなどからの輸入を拡大。2023年時点での中国依存度は約60%にまで低下した。
オーストラリアも中国への経済依存を見直す方向に動いており、信頼関係の構築は容易でない。ただし、RCEPや中韓FTA(自由貿易協定)など、既存の多国間枠組みを通じた経済関係は今後も維持されるだろう。
中国は半導体問題にどう対処するのか
中国はSMICなど自国メーカーを強化し、装置・素材分野でも国産化を推進している。だが、EUV(極端紫外線)露光装置など最先端技術では、依然としてオランダ、アメリカ、日本など西側の技術封鎖に苦しんでいる。
最近の動向としては、「レガシー半導体」(28ナノメートル以上)へのシフトと、軍事・インフラ需要向けの自給強化が顕著だが、5GやAI分野での競争力維持には限界がある。アメリカの制裁が長期化すれば、中国の「半導体自立」は部分的な成功にとどまり、ASEAN諸国での「技術逃れ的生産」(中国資本によるASEANでの生産)が増加することが予想される。
最近注目されるのは、デジタル経済やグリーン経済における中国主導の標準設定だ。
中国は、5Gインフラ、AI、再生可能エネルギーといった分野で、国際標準の策定を通じた影響力拡大を目指している。今後はこうした非伝統的経済圏の動向が、米中の経済覇権争いの新たな焦点になるだろう。
「デジタルシルクロード」やグリーン経済圏に関しては、既存の「モノ中心」の経済圏とは異なる、新次元の覇権争いが生じつつある。中国はアフリカや中東でも5Gインフラや再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電)をテコに影響力を拡大。データの流れや環境基準など、ソフト面での国際標準化戦略を進めている。
これは、従来のサプライチェーン再編とは別の、「ルールメイキング型」の戦いであり、米中のせめぎ合いは今後さらに複雑化するだろう。米中の経済戦争は多面化しつつある。米中対立の軸は単なる関税戦争から、より深層の技術・ルール・基準の争奪戦へと移行している。
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