これにより、アメリカ経済への依存を相対的に低下させると同時に、グローバル経済における主導権を確保しようとしている。そこで、こうした中国の新しい世界戦略と、それに対する各国の反応を見ることとしよう。
ASEANは経済と安保の二重戦略
ASEANは、すでに中国の最大の貿易相手の1つだ。2022年のRCEP(東アジア地域包括的経済連携協定)の発効によって、中国は域内での影響力をさらに強化している。
RCEPはASEAN10カ国と日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの計15カ国が参加。世界のGDPの約3割、貿易総額の約3割を占める広域経済圏を形成している。
その中で、マレーシア、インドネシア、ベトナムなどは、中国企業の投資受け入れ先として台頭しており、アメリカの制裁を迂回するルートとなってきた。
ASEANは中国と密接な経済関係を持ちながらも、米中対立のはざまで中立性を維持しようとする姿勢が強い。RCEPの発効は中国にとっての勝利のように見えるが、ASEAN各国は日本、オーストラリア、さらにはEU(欧州連合)など、ほかの経済圏ともバランスを取り続ける「多角的戦略」を志向している。
なかでもフィリピンやベトナムなどは、経済面では中国依存を深めつつも、南シナ海問題では強硬姿勢を見せている。総じて、「経済と安全保障の二重戦略」がASEAN全体の特徴となっている。
トランプ政権による関税政策に対抗して、中国はアジア諸国との連携を強化することで、地域における影響力を維持・拡大しようとしている。
中国の習近平国家主席は4月にベトナム、マレーシア、カンボジアを訪問し、保護主義に抵抗するために団結するよう呼びかけた。今回の訪問は、中国がアジア地域での影響力を強化し、国際的な地位を高めるための戦略的な動きと位置づけられる。
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