〈強引すぎる買収〉JALの「エージーピー非公開化」提案は少数株主の保護に逆行懸念

日本航空(JAL)が東証スタンダード市場上場企業のエージーピー(AGP)に対して行った株主提案が波紋を広げている。
「対象会社の同意もなく、少数株主の過半数の賛成(マジョリティー・オブ・マイノリティー)も条件づけられていない。かなり強引な株主提案だ」
会社法に詳しい東京大学の田中亘教授は、JALの株主提案をそう評する。田中教授は2019年に経済産業省が公表した「公正なM&Aの在り方に関する指針」を検討する研究会で委員を務めた1人。JALの提案には専門家も首をかしげているのだ。
JALが株主提案を行った目的はAGPの株式非公開化にある。そのためにAGP株の株式併合を求めている。
1391万株あるAGP株を10株に併合させることで、株主はJAL(2024年12月末時点の所有割合30.47%)と日本空港ビルデング(同24.5%)、ANAホールディングス(同18.3%)のみとする。
3社以外の少数株主の持ち分は1株未満の「端株」とし、会社法の規定に基づき強制的に買い取る。
実質的にはJALによる買収提案
買い取りは併合前の株数に応じて1株当たり1550円でAGPが行う。その資金はJALの貸し付けや出資で賄う。非公開化をスムーズに進めるため、JALは社外取締役3人を送り込むことも株主提案に盛り込んだ。
株式併合や端株の買い取りの主体はAGPになる。またJALは株主提案で、大株主3社のいずれもが「単独で支配株主となることは予定していない」と説明する。だが実質的には、JALによる非公開化を伴う買収提案といってよい。
AGPは空港インフラにとって必要不可欠な会社だ。羽田や成田など国内10空港で航空機への電力供給や、手荷物運搬器具など空港内にある特殊設備の保守・整備といった事業を手がける。JALとしては、人手不足の解消や脱炭素化の推進といった課題解決に向けた協業を強化したいとする。
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