資さんうどんが「東京でも通用した」のは、味の美味しさだけではない…全国進出に「失敗するうどんチェーン」「成功するチェーン」の決定的差

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うち稲庭・氷見などは幕府や藩への献上品だったこともあり、製法すら秘されていた高級品だ。

五島うどん
五島うどん。長崎県福江空港レストランにて(筆者撮影)

特に「稲庭うどん」は、稲庭家(佐藤家)が製造を始めた1665(寛文5)年から、300年以上も一子相伝(子供一人のみに製法を伝授)で受け継がれており、熟成と微調整を繰り返しながら3~4日かけて麺を練り上げるという工程は、チェーン店のような「店内製麺、多量提供」向きではない。

上記の「5大うどん」のうち、稲庭・氷見は江戸時代に幕府への献上品として用いられており、製法は長らく門外不出。いまも高級品として扱われ、チェーンストアでの「安く、多量に」提供するようなものではない。

佐藤養助総本店 稲庭うどん
稲庭うどん。秋田県湯沢市「佐藤養助総本店」にて(筆者撮影)

現状で、稲庭うどんは東京なら銀座・日比谷、海外なら香港・ソウルにある「佐藤養助商店」直営店で味わえる。

いずれも相応に値段は張るものの、滑らかな細麺と丁寧に取られた上品なダシの組み合わせが絶品! かつ「これは庶民の食べ物ではない」「チェーン店で毎日食べるものではない」という高級品としての佇まいを、ひしひしと感じる一品だ。

他にもいろいろ 首都圏で食べられるご当地うどんも

若草堂 伊勢うどん
伊勢うどん。三重県伊勢市「若草堂」にて(筆者撮影)
鳴ちゅるうどん 大井食堂
鳴ちゅるうどん。徳島県鳴門市「大井食堂」にて(筆者撮影)

書ききれないものの、全国には絶品のご当地うどんがまだまだ存在する。

讃岐うどん、福岡県のうどんがすんなり受け入れられていることから、「ご当地うどん」の定着に、麺の硬さ・柔らかさは関係ない……と思いきや、さらに柔らかい伊勢うどん(三重県)、伊勢うどんよりさらに柔らかい「鳴ちゅるうどん」(徳島県)まで来ると、さすがに好みが分かれる。

特に「鳴ちゅるうどん」の麺は、箸で持ち上げるとブチブチ切れるほどの柔らかさだ。

吉田うどん ふじや
吉田うどん。山梨県富士吉田市「ふじや」にて(筆者撮影)
豊橋カレーうどん 勢川本店
豊橋カレーうどん。愛知県豊橋市「勢川本店」にて(筆者撮影)

硬い麺なら、武蔵野うどんよりさらに麺が図太い「吉田うどん」(山梨県)も食べておきたい。一時期はカップ麺で商品化されたこともあり、今でも都内の専門店は、コアなファンがよく訪れているという。

ほかカレー汁・とろろ・ご飯を重ねた「豊橋カレーうどん」(愛知県)も都内数店で提供されており、各地のご当地グルメ系イベントでは「津山ホルモンうどん」(岡山県)がいつも大人気! 現地に足を運ばずとも、ご当地うどんを現地以外で食べるチャンスは、意外と多い。

全国で当たり前のように食べられるようになった讃岐うどん、福岡のうどんも「たまたま全国へのチェーン店展開に向いていた」だけで、他地域のご当地うどんに優劣があるわけではない。

まだまだ各地に存在する、地域の風土に根差した一杯を探して、全国をふらふらと巡るのもいいだろう。何気なく食べたあの一杯が、5年後・10年後には日本を代表する麺料理に成長しているかもしれない。

【もっと読む】《大阪万博》「高すぎる」と賛否両論の「1杯3850円」のえきそば。普段は安価な"姫路のソウルフード"がなぜこの値段で? どこが違う? では、大阪万博で話題となった姫路の「えきそば」を特集。ライターの宮武和多哉さんが現地を訪問、豊富な写真とともに、詳細に解説している。
宮武 和多哉 ライター

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みやたけ わたや / Wataya Miyatake

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護にリアルに対処中。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅(既刊2巻・イカロス出版)など

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