もう1つは至って単純な理由だ。長い年月を生き、思い出が増えていった分、捨てられない“大切なモノ”も必然的に増えていくからだ。
「とはいえ、モノを捨てる人がそれらを大切にしていないというわけではありません。逆にモノを大切にするためには、ある程度の断捨離が必要になってくると思うんです」(二見氏)

親子の関係を壊してまで片付けなくてもいい

片付けは2日間にわたって行われた。1日目は5人のスタッフで1階部分を、2日目は総勢7名で2階部分を片付け、すぐにでも売却できる状態になった。
しかし、作業をずっとそばで見守っていた依頼主の娘は肩の荷が下りたようだが、どこか寂しそうでもあった。
「このお家、陽もよく当たるし風通しもいいのに、なんか暗かったからね。ここに戻ってきたいと思うくらい。手放すのが嫌なモノもありましたが、持って帰っても飾らなかったり使わなかったりしたらゴミでしょ。だったら、誰かに使って貰ったほうがいいし、いま捨てないと今度は子どもたちが困るでしょ。だから、自分の手でケリをつけられてホッとしています。気持ちがスッとしました。モヤモヤしていましたから」(娘)
親の死後に子どもが困らないためにも生前整理は大切である。しかし、親子の関係を壊してまで無理して行うものでもない。今回の依頼主である娘はそこで無理をしなかったがゆえに、後味のよい遺品整理ができたのかもしれない。


記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら