前年度に落ちた理由を「時間が足りなかった」と考える東郷さんにとって、1問1問、1個の単元にゆっくり向き合えるようになった浪人の1年は確かに成長を感じられたそうです。
「受験勉強は、天高くにある合格をつかみ取るために、その合格に手が届くようレンガを素早く積み上げて塔を作る作業だと思います。それで築いた塔が最後まで崩れなかった人は合格に手が届くのですが、自分の塔は最後までもちませんでした。不揃いなレンガを無理やり重ね、不恰好な塔を作ってしまったからです。
そう思うと、浪人時代は不揃いなレンガをきれいな形につくり直し、塔の隙間をセメントで補強する時間がしっかりあったのがとてもよかったと思います。現役のときは先生の言っていることがわかりませんでしたが、浪人してからは正解するために必要な要素をちゃんと説明できるようになり、ロジックを用いて答えを導けるようになりました」
本番では数学でミスをしたものの…
こうしてじっくりと対策を重ね、万全の状態で共通テスト初年度の試験に臨んだ東郷さんは、英語のリスニングでつまずき、900点中774点と前年度と変わらない成績に終わります。
この結果を見て理科2類に出願した東郷さん。後期試験でこの年は共通テスト利用だけで2次試験がない横浜国立大学に出願することは決めていましたが、東大の対策をひたすら重ねました。
そして迎えた2次試験。終わったときはまずまずの感触だったようですが、後日、数学の問題を解き直したとき、簡単な問題を間違えて20点を落としていたことが発覚し、落ち込みます。
「ミスが発覚してから東大の合格発表までの2週間は、ずっと部屋にひきこもっていました。こんなミスで終わってしまうのかと絶望していましたね。親も先生も目も当てられないという感じで、気を遣ってくれていました。それでも合格発表を迎えて見たら、なんとか合格最低点からプラス20点上回って合格していたのでよかったです」
こうして東京大学理科2類に1浪で合格した東郷さん。浪人してよかったことを聞くと、「自分のことを見つめる期間を取れた」、頑張れた理由について聞くと、「成果を出さなければならないという恐怖心」と答えてくれました。
「自分がどういう人間で、どう育ててもらったのかを自覚する時間だったなと思います。僕という人間は、人様に育ててもらった感覚がずっとあるのですが、そういう性質を見つけられたのは浪人の期間ですし、それは大学生活や今の仕事にも直結していると思います」
そして、浪人を経験してからはよりいっそう周囲の人に感謝するようになったそうで、それが現在の起業にもつながっていると言います。
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