TPP、コメ「関税維持」で消費者が被る不利益 「聖域」とされるコメの政策は矛盾だらけ
配慮は関税だけではない。「コメは農家への戸別所得補償や、減反による人為的な価格上昇などにより、消費者に年間約1兆円の負担を強いてきた」と、キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁・研究主幹は指摘する。
農産物の中で、特別に保護されてきたにもかかわらず、コメ産業の衰退は著しい。食の欧米化の流れに逆らえず、日本の農業算出額に占めるシェアは、1960年の47%から2013年は21%まで低下した。減反政策による下支えのかいもなく、コメ価格はこの20年で半減している(右図)。
産業としてのコメが、今後も国内市場のみで生きていくことは、どう見ても難しい。大規模化による生産コストの引き下げなどで、輸出に活路を求める必要がある。
競争力があるコメ農家も存在
しかし、そのきっかけとなる可能性があったTPPにおいても、結果的に、コメ農家は高い関税で保護された。「外圧による構造改革が期待できず、このままではコメ産業はジリ貧となる」と、山下氏は警鐘を鳴らす。
とはいえ、すべてのコメ農家に、競争力がないわけではない。本間正義・東京大学教授は「農地集約により大規模経営を実現し、輸出可能な価格競争力を持っている農家も存在する」と分析する。
本間教授によると、日本のコメ農家の生産コストは、1キログラム当たり100~400円程度とバラツキが大きい。販売価格は1キログラム当たり平均200円なので、実質的な採算割れに陥っている農家もある計算だ。こうした非効率な例は零細の兼業農家に多い。