韓国人がよく口にする「国格」という言葉に見る≪映えの文化≫の病理。梨泰院の雑踏事故や務安国際空港の事故など”安全軽視”姿勢が招く惨事

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約1600人が参加した日本代表団の場合はどうだったのか。日本代表団でも毎日数人程度の熱中症患者が発生していた。新型コロナウイルスやインフルエンザの患者も各20人ほど出たが、当初は「何とかなる」とも考えていた。ところが、米英などの撤退がニュースで伝えられると、日本で事態を見守っていた保護者などから心配の声が上がった。

現地でも徐々に疲労感が濃くなり、「暑くてこれ以上、耐えられない。屋根があるところに避難したい」という主張に変わり、8日に野営地を離れたという。

世界スカウト連盟総会が韓国を「2023ジャンボリー」の開催地に選んだのが2017年8月。韓国メディアも散々、「6年も準備期間があったのに何をしていたのか」と批判した。文在寅政権当時から始まった話だけに、尹錫悦大統領だけの責任ではない。

ただ、猛暑や台風についても、気候変動問題が世界のトレンドになっている昨今、「予想できなかった」という説明には、十分な説得力がない。予算は1171億ウォン(117億円)もあったと報じられている。

日本政府関係者の一人は「こうした事件が起きるたび、『韓国は安全不感症』という指摘が出るが、的外れとは言えないだろう」と語る。2022年10月のハロウィーンに、群集雪崩によって150人以上が死亡したソウル・梨泰院(イテウォン)の雑踏事故でも、事前に十分な交通規制を敷いていなかったという指摘が出た。

韓国メディアは、ジャンボリー会場の水はけが悪く樹木が育たなかった理由に、セマングム開発を急ぎたい地元政府が、公的財源から埋め立て予算を引っ張ってこようと、無理に開発したことを挙げている。

「国格」と「映えの文化」

この惨状を目の当たりにして思い浮かんだのが、韓国の人が好んで使う「国格(クッキョク、国の品格)」という言葉だ。2010年、当時の李明博政権は「国格向上運動」を始めた。同年11月の主要20カ国・地域(G20)首脳会議主催に合わせ、「G20として恥ずかしくない国をつくる」(韓国政府関係者)のが目的だった。李明博氏はこの年の新年演説で「国格を高めるため最善を尽くす」と宣言している。

韓国は1910年から1945年にかけ日本に統治され、「亡国」のつらい時代を過ごした。祖国への愛情は人一倍強く、自負心も並々ならぬものがある。

韓国の人々がよく使う言葉の一つが、「漢江の奇跡」と呼ばれる高度成長についての「欧米は100年、日本は50年かかったのに、我々は20年で成し遂げた」というものだ(人によって、主張する年数は微妙に異なる)。

2023年5月に広島で主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれたが、韓国では「韓国も加わってG8に」という記事が間欠泉のように流れる。この感情に支えられた行動の一つが「国際大会」の誘致だ。

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