韓国人がよく口にする「国格」という言葉に見る≪映えの文化≫の病理。梨泰院の雑踏事故や務安国際空港の事故など”安全軽視”姿勢が招く惨事

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G20もそうだが、韓国は国際的なイベントの誘致に情熱を燃やす。この世界ジャンボリーでも、尹錫悦大統領が開営式に出席した。国際的な評価を気にするため、ジャンボリーで混乱が広がり始めると、韓国政府は急遽、69億ウォン(約6億9000万円)規模の緊急支援を決め、医師やエアコン付きのバス車両を派遣するなど、迅速な対応ぶりを見せた。

日本代表団の場合、救援要請を受けたソウルの日本大使館が韓国外交省に「何とかしてくれ」と頼むと、すぐに忠清北道にある救仁寺を提供した。同時に、日本側に対して「(本国に帰るという)撤退ではないよね」と何度も確認を求めてきた。梨泰院雑踏事故でも、韓国政府は日本人被害者の遺族に対し、ソウルでの宿舎の手配や弔慰金の支払いなどで誠意のある対応を見せたという。

外聞を気にするのは人間の性だが、韓国には特に「映えの文化」を強く感じる。韓国では登山やサイクリングを趣味にする人が多いが、「まずは外見が大事」とばかり、本格的なウェアや装備品をそろえるところから入る人がほとんどだ。

2024年に起きた航空機事故

1994年10月に起きたソウル・漢江にかかる聖水(ソンス) 大橋の崩落事故、1995年6月に発生したソウルの三豊(サンプン)百貨店崩壊事故の際も、「高度成長に浮かれ、安全点検を怠った」という指摘が出た。

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尹大統領の弾劾が話題になっていた2024年12月29日、韓国南西部の務安(ムアン)国際空港で、バンコク発務安行きのチェジュ航空機(ボーイング737-800型)が着陸に失敗し、滑走路の外壁に衝突して炎上した。乗客乗員181人のうち179人が死亡する大惨事になった。

バードストライクが原因とみられる着陸装置の故障から胴体着陸をした機体は、時速200キロ以上のスピードで空港の周囲を囲んだコンクリート壁に激突したとされる。

ソウル・光化門にある中央庁舎群の太極旗はみな半旗になり、国会議員や政府高官たちは喪章をつけた。この事故でも、空港にあったコンクリート構造物の危険性などが指摘された。

事故直後に会った韓国政府高官は「なぜ、空港の周囲をコンクリート壁で囲んでいたのか。周囲は海だったから、むしろ鉄条網などで囲んでいれば、もっと生存者が多かったのではないか」と語った。

この時点では詳しい調査結果が出ていなかったため、正鵠を射た発言かどうかはわからない。しかし、この発言を聞きながら、私は「なぜ、また、こうした事故が繰り返されてしまったのか」というやるせない気持ちに襲われた。

牧野 愛博 朝日新聞外交専門記者・広島大学客員教授

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まきの よしひろ / Yoshihiro Makino

1965年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、大阪商船三井船舶(現・商船三井)に入社。1991年、朝日新聞社入社。瀬戸通信局、政治部、販売局、機動特派員兼国際報道部次長、全米民主主義基金(NED)客員研究員、ソウル支局長などを経て現職。『北朝鮮秘録 軍・経済・世襲権力の内幕』、『ルポ 絶望の韓国』(ともに文春新書)、『戦争前夜 米朝交渉から見えた日本有事』(文藝春秋)、『金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日』(講談社+α新書)、『ルポ「断絶」の日韓』、『北朝鮮核危機!全内幕』(ともに朝日新書)、『ルポ 金正恩とトランプ』(朝日新聞出版)など著書多数。

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