「円安是正で輸出採算悪化」→「株安」は杞憂か? サプライチェーンの進化によって「為替感応度」は低下している

為替の円高進行が日本株相場に与えるマイナスの影響は以前よりも縮小しており、米国が対日貿易赤字の削減に向け週内の開催が見込まれる日米高官の協議で円安是正を求めても、投資家が抱く株安への不安は杞憂(きゆう)に終わるかもしれない。
加藤勝信財務相は24日にもベッセント米財務長官と会談する見通し。円相場は既に日本銀行の企業短期経済観測調査が示す企業の2025年度の想定レート(1ドル=147円06銭)を上回っており、一段の円高で輸出企業の業績に下押し圧力がかかることを株式投資家は懸念している。
一方、足元の円高基調が始まった1月上旬以降の値動きを国際比較すると、日本株の底堅さが浮かび上がる。下落率は東証株価指数(TOPIX)の6.8%に対し、円換算後のMSCIアジア太平洋指数(除く日本)は10%、米S&P500種株価指数は21%に達する。
モルガン・スタンレーMUFG証券の中沢翔株式ストラテジストは、「ドル・円に対する株価の感応度は、10年単位で見ると低下してきている」と指摘する。日本企業が需要に応じて海外生産を拡大するなど、サプライチェーンを進化させてきたためだ。
中澤氏の分析によると、TOPIXのドル・円相場に対する感応度は14年にピークを付け、その後は低下基調をたどっている。1%の円安・ドル高によるTOPIXの押し上げ効果は14年の1.15%から今年3月には0.5%まで低下したという。