日本企業がP&G、アマゾンなどから学ぶべき「ビジネスプロセス変革」、SSCからGBSへの進化の手法とは?

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『ビジネスプロセス変革』で著者は“一貫したオペレーティングモデルがなければ継続的な変革を推進するのは困難だ”と述べています。多くの企業がビジネス環境の変化に即座に柔軟に対応するために、GBS/SSCモデルを活用し、企業価値の向上やビジネスの加速、新たなビジネスの創出を図っています。

GBS/SSCモデルの活用というと海外企業が先行しているというイメージを持つ方が多いかもしれません。事実、『ビジネスプロセス変革』においてもP&GやGEなど海外の事例が多く取り上げられています。一方で日本国内でも先進的に取り組み、高い成果を上げている企業が複数あります。

ファイナンス組織の改革を成功させた3つのポイント

一例を挙げると国内製造業大手A社では、激しい産業構造の変化や技術革新に対応すべく、事業変革に伴いコーポレート部門のファイナンス組織においても事業を支える機能としてSSC化に舵を切りました。A社では3つのポイントからファイナンス組織の改革を成功させており、E2E(End to End)でのプロセス設計は本書の中でも重要なトリガーであると定義されています。

1. テクノロジー活用におけるE2Eを起点としたプロセス設計

部分的でなく横断的に俯瞰的にプロセスの良しあしを設計し、ファイナンス組織自身がメンテナンス責任を負うことで、さまざまな、いかなる環境の変化にも柔軟に対応できるプロセスを設計しました。E2Eのプロセス設計の重要性はP&Gの事例等でも見られ、GBS/SSCを成功させる重要な要素であると位置づけられます。

2. 人的モデルを重視したさまざまなキャリアロールモデルの形成

ファイナンス組織の重要な役割として事業を下支えする組織であると定義し、ファイナンス組織で経験を積み事業経営者を目指すキャリアモデルを設けているのも一つの特徴だと言えます。

3. ミッションを明確にしたTo-Beありきの機能設計

M&Aや事業売却等によって変化する上流プロセスやシステムに柔軟に対応するために、As-Isの延長線上での改革でなく、戦略・ミッションからブレイクダウンしたあるべき機能を満たす組織を組成しました。As-Isでの課題をいかに解決するかも重要な視点ではありますが、変動するビジネス環境にいかに対応するかと考える際には、戦略・ミッションからブレイクダウンして設計するという手法も極めて有効であると考えています。

ファイナンス組織の改革を成功させた3つのポイントは、先進事例においても重要であると位置付けられており、P&Gの変革の成功においては、E2Eでのプロセス設計を国や領域を跨ぎ実現させたことであると考えられます。また、「人」に焦点を当てる取り組みを推進するリーダーシップ像も興味深い点です。

通常、ビジネスプロセスの変革となると強力なリーダーシップが必要であると考えがちですが、M&Aにおいてシナジーを出すためには、リーダーシップ型のアプローチでなくフォロワーシップ型のアプローチが重要であることも日本企業にとっては参考になるでしょう。

日本ではSSCの設立や業務範囲の拡張が活発に行われていますが、GBSについては、特定の業界を除いて、まだ広く普及しているとは言いがたい状況です。日本の企業もSSCからGBSへの進化を目指すことが企業価値向上につながると言えるでしょう。

永井 康幸 EYストラテジー・アンド・コンサルティング Global Business Services パートナー

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ながい やすゆき / Yasuyuki Nagai

外資系コンサルティングファームにて、業務改革、システム導入に従事した後、外資系ITO/BPOベンダーにおいてBPO事業責任者としてオペレーション改革、中国を中心としたオフショアBPO展開に従事。その後、グローバルのGBS/SSCコンサルティングに従事し、2018年EYに参画。現在はGlobal Business ServicesのJapan Region Leaderとして主に日系企業向けに業界横断的にグローバルのオペレーションの効率化、高度化支援等に従事している。

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山本 大介 EY・ストラテジー・アンド・コンサルティング Global Business Services マネージャー

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やまもと だいすけ / Daisuke Yamamoto

大手広告代理店や外資系コンサルティングファーム等を経て現職。マーケティング/セールスBPOのセールスから業務移管、業務改善に従事。コンサルティングファームと事業会社の双方での豊富な経験をもとに、幅広い業界における企業のマーケティング/セールス領域におけるビジネス変革の支援を行っている。また、現職では人事や経理領域のBPO/業務改善案件も複数担当しており、バックオフィスからフロントオフィスまで幅広いテーマに専門性を持つ。

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