日本企業がP&G、アマゾンなどから学ぶべき「ビジネスプロセス変革」、SSCからGBSへの進化の手法とは?
近年、日本における各企業では労働人口の減少により業務継続に対するリスクが高まっています。一方、これまで盛んに行われたオフショアBPOについて、近年のオフショア人件費の高騰、地政学リスクの高まりなどにより、オフショアBPOから国内SSCへ回帰する動きが出始めています。また、コロナ禍以降の働き方に対する意識変化、リモートワークの浸透などに伴い紙の送付などの物理的制約が軽減されてきたことで、改めて業務集約化を検討する動きが加速しています。
外部環境に目を向けると、企業会計や税務の継続的な改訂・デジタル化対応は今後もさらに高度化・複雑化することが見込まれます。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)をはじめとする社会的な課題解決に向けた企業の在り方に対する開示が求められるなど組織全体として対応しなければならない事項は増えており、業務負荷の継続的な増大に加え、専門知識を有する人材へのニーズも高まっています。
EYストラテジー・アンド・コンサルティングでは、日本に拠点を置く40社を超える主要企業にサーベイ「GBS(Global Business Service)の高度化に向けた現実と課題」を実施(2022年6月~11月)し、GBS/SSCの機能強化に向けた課題やニーズは何か、高度化推進がなされている企業はどのような特性を有しその要因は何かを分析・考察しました。
EYによる調査では、8割を超える企業が各国の個別のシェアードもしくはリージョン単位でのシェアード(もしくはその中間)に位置しており、グローバルでの横断的な組織強化はまだ初歩的段階にあることがわかりました。
GBS/SSCの運用課題として、「プロセスの標準化/業務効率化ができていない」がローカル(日本国内でSSCを展開/運用する日系企業)では8割超、グローバル(日本以外の国・地域でGBS/SSCを展開/運用する日系企業)でも4割を超え最も多い結果となりました。特にローカルにおいては集約したもののグループ会社間の業務・システムの相違などの影響で会社別の組織・チーム編成が長きにわたって継続しており、標準化/効率化が進んでいないケースも散見されます。
一方、高度化のニーズは大多数の企業で確認されており、最新テクノロジーの導入や専門性の深化などGBS/SSCが提供するサービスそのものに関する事項だけでなく、マネジメントや責任者配置などの体制充実に関する事項も挙げられます。
「4つのステージ」と「3つのドライバー」
社会環境やテクノロジーが目まぐるしく変化する時代において、GBS/SSCの導入はビジネスオペレーションの改善や高度化だけにとどまらず、戦略的に重要な位置づけになります。企業が自己改革するためのモデルとして、ビジネスプロセスの「4つのステージ」と「3つのドライバー」があります。
ステージ1 成熟度 初期段階
ステージ2 成熟度 計画型へ
ステージ3 成熟度 統合型へ
ステージ4 成熟度 即応型へ
ドライバー1 オープンマーケット・ルール
ドライバー2 ユニファイド・アカウンタビリティ
ドライバー3 ダイナミック・オペレーティング・エンジン
P&G、パタゴニア、サムスン、アマゾン、テンセント等々の先進企業は、3つのドライバーを活用して、ステージ1からステージ4へと成熟度を高めている好例と言えます。