日帰りで気軽に山歩きを楽しむ「フラット登山」のススメ 気軽に、気持ち良く、楽しく歩こう!

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なぜこんなおかしなことになっているのか。片野氏は、スマホの充電にたとえてわかりやすく説明している。

「活動し、疲労することで電池の残量は減ります。しかし、休養することで充電し、再び活動します。休養で100%フル充電状態に戻れれば、これで何も問題ありません。しかし、もうおわかりかと思いますが、なにしろ日本人の8割が疲れているわけですから、実際にはそうなっていません」

つまり充電しても、フル充電どころか50パーセントぐらいしか充電できていない状態で仕事に戻っているのだ。50パーセントの充電でまた活動を始めるから、すぐに20パーセントぐらいに減ってしまう。それでまたすぐ休養し、と繰り返すと疲れがただ溜まっていくだけ。

だから「ただ休む」だけではだめで、活動することによって「活力」も加えることが大事なのだ!

まさに目からウロコの指摘である。そして活力を高めるために必要なのは、「あえて軽い負荷を自分に与える」ということだと片野氏は言い切っている。その方法のひとつとして、キャンプやウォーキングなども提案されている。わたしが提唱するフラット登山は、まさにこの「軽い負荷」そのものである。

頭脳労働には山が効く!

わたし個人の経験からも、この話は非常に同意できる。21世紀に入ってこのかた、どんな仕事も頭脳を酷使するようになってきている。現場の仕事だろうがパソコンの前に座る仕事だろうが、脳みそを激しく使わなければこなせなくなってきているのだ。そして頭脳を使う仕事を延々とやっていて疲れてしまうと、脳みそが煮つまったようになって、ただ横になっているだけでは疲れがとれなくなってくる。

『歩くを楽しむ、自然を味わう フラット登山』(かんき出版)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

そんなときに、山を歩く。ひたすら大地を踏みしめ、風を感じ、どこまでも広がる青空に吸い込まれそうになりながら、前に進んでいく。すると脳の疲れはきれいに消えていく。最後に温泉に入ってゆっくり目をつぶることができれば、なお良い。翌日には頭の疲れはすっかり消えている。

そして、とてもタイミングの良いことに、令和になって日本の労働はブラックからホワイトへと急速に切り替わりつつある。長時間労働と厳しいノルマが当たり前だった平成時代は終わり、みんな定時に帰れるようになった。新型コロナ禍でリモートワークもある程度は定着してきた。休日もしっかり取れるようになってきたのだ。

だから今こそ、休日はドアを開けて外に出て、大自然の中で頭を空っぽにしながら道を歩く時なのだ。

「とても疲れている。山には登ったことがないけど、やってみたい」とふと思ったことがある人は、ぜひフラット登山を生活に取り入れてみてほしい。

佐々木 俊尚 作家・ジャーナリスト

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ささき・としなお / Toshinao Sasaki

1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、『月刊アスキー』編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治、経済、社会まで、幅広い分野で発言を続ける。最近は、東京、軽井沢、福井の3拠点で、ミニマリストとしての暮らしを実践。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)、『時間とテクノロジー』(光文社)など著書多数。

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