背水の陣で挑むiRobot、新ルンバ6機種で経営再建へ。自前主義からの脱却、OEM/ODM活用で短期間に新製品開発

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「日本のルンバユーザーの多くは、ルンバを家族の一員として大切にしてくださっています。日本は世界で最も高いブランドロイヤリティを持つ国です」とコーエンCEOは日本市場を評価する。

アイロボットジャパンの挽野元社長によれば、昨年2024年には国内ロボット掃除機の普及率が10%に達し、国内累計出荷台数も600万台を突破したという。

そのような重要市場で、中国メーカーなど競合の猛攻をどう見ているのか。質疑応答でも記者から問われたコーエンCEOは「競合に関しては真剣に捉えています。カテゴリーの成長につながるからこそ関心を持っています」としつつも、「私たちには独自の強みがある」と強調。「私たちのようなリテールパートナー、流通パートナーを持っている他社はありません。また、世界中に何百万台というロボットがアクティブに使われており、アプリやデータという形でつながっています」と自信を見せた。

アイロボットジャパンはこの強みを活かし、新たな中期目標として2030年までにクリーナー市場で20%のブランドシェアを目指すという。「ルンバは、もう掃除機の『あたりまえ』に」をスローガンに掲げ、製品やサービスだけでなく、コールセンターや修理などのカスタマーケアの強化にも取り組むとしている。挽野社長は「国内で販売される掃除機の5台に1台がルンバである世界を5年後に目指したい」と語った。

再建への本命策か、最後の勝負手か

今回の全面刷新がどこまで業績に反映されるかは未知数だ。継続企業に疑義を付した監査法人も、「新製品が成功する保証はなく、競合環境やマクロ経済リスクが依然大きい」点を指摘している。市場環境によっては、今回のラインナップが“最後の勝負手”になりかねない。

コーエンCEOは「会社の財務状況が芳しくない」という前提を認めつつも、「債務の借り換えや戦略的取引の可能性などを検討している」と説明。「ゴーイングコンサーンは今後の戦略的見直しにより修正できる見込みだ」とCEOは自信を見せている。

さらに「本日発表した新製品は従来品に比べ利益率も向上しており、2025年の収益性に貢献する」と強調。「ここ1年でビジネスモデルを変え、ロボットの開発・製造を刷新し、アジアのパートナーと連携しながら“スーパーファースト”に動いている。私たちはどこにも行きません」と明言した。まさに背水の陣で挑む新ルンバが期待どおりの成果をもたらせば、長期的な事業存続に関する疑問も大きく後退するだろう。

石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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