突然のガン告知､でも彼女はあきらめなかった 2人に1人がガンになる時代をどう受け止めるか

「告知された後、やっぱりネットで病院とか、病気とか調べました。そして、悪い話ばかり見てしまう。そこで、死んでしまうんじゃないか、もしこうしていればガンにならなかったんじゃないか、とかばかり考えてしまいました。でも、そんな考えも行くところまで行って、もういいや、ってなったんです。今できることを精いっぱいやろうと」

ガンの告知を乗り越えて、できること。それはまず闘病に必要な環境を整えるために仕事を休むことと家族の理解を得ることでした。しかし、これはガンの告知を受けた人たちが最初にぶち当たる壁なのです。

「告知されたあと、仕事は大変でした。会社には伝えていたので、会社へ行くと、みんな気を遣って会社全体がお葬式みたいな暗い雰囲気なのです。手術・入院に入る前のあいさつまわりと引き継ぎでも、来てもらっても困るからと言われた取引先もあります。そして、家族。主人にはすぐに伝えられたけど、やっぱり親にはタイミングが見つけられなくて、なかなか伝えられなかったです」

数々の葛藤を抱えながらも、身の回りのことを整理した桜井さんは、何とか手術と入院生活に入ることになります。

会社には復帰するも…。居場所がつくれない。

手術も無事成功し、約1カ月の入院期間を経て、同じ職場に復帰した桜井さん。しかしその後、その職場での仕事に苦しむことになります。

「会社には復帰したのですが、結局、自分の居場所がつくれなくて復職から1年半で辞めてしまいました。入院はいろいろな出会いもあって楽しかったけど、社会復帰してからがつらかった。自分も周りも、ガンになる前の自分と比較してしまう。でも、体力的にも精神的にもやっぱり前のように働けない。その一方で、体に負担がかかってまた病院に迷惑かけるのかもしれないという不安もある。新しい自分をどこで設定するのかが難しかったです」

もともと、バリバリ仕事を進めていたこともあり、桜井さん自身もそして職場のメンバーも、今までどおりの仕事に復帰できると考えていたのでしょう。しかし、病気で失ったものはとても大きかったのです。元のように働けない、そんな自分を責めてしまうという悪循環に陥りそうになりながらも、桜井さんが進んだ道が、自分の経験を生かして起業をするということだったのです。

「今、外に出ないと、一生このまんまだなと。辞めるときに、自分のガン経験を生かした社会貢献をやると決めていました。もちろん、めちゃくちゃ不安でしたよ。特に、またガンを再発した時はどうしようもないなぁと。実際に私はもう一度、再発が疑われて手術もしているんです。だから、再発リスクがある中で生きられていることに感謝しているんです。これで、良しとしなきゃと」