水を守りに、森へ 山田健著

水を守りに、森へ 山田健著

飲料メーカーに不可欠な資源である地下水を超長期に持続可能なものとするために、S社が取り組んだのは森づくりだった。今、森林は水を養う力がどんどん低下している。といって単に木を増やせばいいというものでもない。地下水を育むためには樹木の種類と組み合わせ、本数、根の張り方、そして下草の状態も重要である。著者は地下水系についてまず学び、さらに工場背後の森へ入り込んで林道造りはじめ伐採、植栽、下草、病虫害、鹿害、竹害と次々に体験を重ねる。

社外の専門家の力を借り、地域も巻き込み、短期的には一銭の得にもならないプロジェクトを一歩一歩積み上げ推進していく苦労話が軽妙に描かれる。自由闊達に取り組むことを可能にさせる社風は、短期利益志向が幅を利かす昨今、貴重だ。社内コピーライターとして活躍したキャリアならではの筆致で読者を楽しませつつ、森の本質を縦横に語って興味の尽きぬ森林再生の記録となった。(純)

筑摩選書 1575円

  

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