手足が震える、動作が鈍くなる、筋肉がこわばる、体のバランスが取りにくくなるといった運動症状に加え、抑うつや不安、幻覚、妄想などの精神症状も見られます。高齢になるほど発病率が上がりますが、進行はゆっくりで年単位で悪化する病気です。
パーキンソン病は症状が多様なため診断が難しく、確定診断が出るまでに時間がかかることもあります。A子さんの母親もパーキンソン病が原因と思われる症状が表れ始めてから確定診断が出るまで、2年以上の月日を要しました。
最初の異変はこんな症状だった
「最初の異変は、料理ができなくなったことでした」
A子さんは、母親の異変についてこう振り返ります。それまでは普通に家事ができていた母親でしたが、料理の手順を忘れがちになってきたのを皮切りに、できる家事が減っていったといいます。
「ほかにも、着替えが必要なほど大量に汗をかくようになったり、ふらつきのため自転車事故を2度も起こしたりするなど、明らかに普通ではない状態がしばしばありました。あと、夜中に突然大声で怒鳴ったり、気分が沈むことが増えたり、『だるい』を連発したりと、メンタル的な症状もあったと思います」
そうA子さんは話すものの、最初のうちは「また何か言っているな」と、本人の訴えをあまり真剣に聞こうとしませんでした。
「というのも、母親は元来、不安や不満をよく口にするタイプで、私や父からすれば『またいつもの小言を言っているな』ぐらいにしか思えなかったのです」(A子さん)
夜中に母親が叫んでいるときも、「ずいぶん寝言が大きいな」という認識しかなく、ふらつきがちなのも「年を取って踏ん張る筋力が落ちたからだろう」と思っていたそうです。
A子さんによると、実はこの間、母親はいろんな診療科を受診しています。しかし、どの科で診てもらっても原因がわからなかったようです。
内科だけでなく、心療内科にも診てもらっていますが、処方された抗不安薬や抗うつ薬を飲むと、症状は変わらないどころか、悪化する一方。表情がなくなり、ムスッとして、文句ばかり言うようになっていました。
「そんな母親を前に家族もどうしていいかわからず……。あのときが一番つらかったです」(A子さん)
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