廃屋修理で使う場合には材を買う必要がなくなるが、修理した廃屋がシェアハウスやアトリエになって収益を上げてくれるまでには時間がかかる。
自分たちで使うのではなく、大工に使ってもらおうとしてもたいていの大工は廃材利用を嫌がる。廃材を床に貼る際には乾燥した材が割れないように上からビスを打つ必要があるが、大工はきれいに作りたがり、ビスが表面に出ないように横からビスを打とうとする。
何に味わい、美や価値を見いだすか。リノベーションや古民家が認知されるようになってはきているが、それでも新品の、整然としたモノをよしとする感覚は使う人のみならず、作り手側にも根強く、廃材利用が一気に広がる可能性はきわめて低い。
集まってきた古物から骨董的価値のあるものを目利きして販売、収益を上げるという手も考えられるが、丸山さんはそのやり方をやらないとまでは言わないものの、そこに全振りはしないという。
「やりたいことは市場価値があるとされているものを見つけて売ることではなく、市場価値がないとされてしまったものの本当の価値を発見、それを伝えて資源が循環する仕組みを作ることだからです」(丸山さん)
価値の転換を図りたいというわけだが、そこまでには時間がかかる。そこで、まずは古物を素材に新しい解釈でモノ作りを行い、それを手に取れる場所を作るという。


すでに店舗入り口には旧家からレスキュー(廃材をもらってくること)してきた床柱を徳島県神山町の木材旋盤加工所「日の出ロクロ」と共同で製作、古材の趣を生かして作られたお盆とリム皿が並べられている。
今後も廃材の柱を利用したテーブルの脚、フォトフレーム、廃品を使った照明その他の製品を作っていく予定だという。
廃材利活用のネットワークが広がる
また、店舗前の広い庭をオフグリッド経験ができるキャンプ場にする、カフェを作るなどの計画もある。それらを整備、軌道に乗せるまでにはまだまだ時間がかかるだろう。その先に価値の転換があると考えると現時点を5分の1というのは言い過ぎではないかと悩むところだが、一方で明るい兆しもある。
「2023年からリビルディングセンタージャパンで『リビセンみたいなおみせやるぞスクール』が開かれており、参加者間に廃材利活用のネットワークが生まれています。
遠方に相続した家があり、そこにあるまだ使える家具や木材を使ってほしいという時にその場所の近くにいる他の参加者たちがレスキューに行くなどといったもので、すでに参加者は150人超。同時多発的に全国あちこちでリビセン的な店をやろうという人が生まれ始めています」
価値の転換などありえないと思うかもしれないが、昭和、平成、今を比べただけでもさまざまな変化があったことは誰もが知っている。昭和と今で考えれば変化のスピードはより速くなっている。廃材が普通に使われる日も意外に近いかもしれないのである。

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