普通の人ならこれはもうダメと思うような廃屋に喜々として手を入れてきており、合言葉のひとつは「屋根が落ちてからが本番」。どれだけ“変態(=むちゃくちゃ褒めている)”かがこの言葉からおわかりいただけよう。
改修は8割以上を廃材で賄うのが目標
廃屋認識レベルの変態さに加え、彼らの活動の特徴のひとつに廃材の利活用がある。
一般的なリノベーションでは建物内部をスケルトン(内装をすべて撤去、骨組の状態にする。最近はそこまでしないリノベーションも増えている)にしてゴミをたくさん出した後で、新しい材を使って部屋を改修することが多い。だが、彼らは改修に使う材の8割以上を廃材とすることを目標に、ゴミになるはずだったものを資源に変えてきた。
解体する家、廃業する工場、販売終了でお役御免になったマンションのモデルルームその他さまざまな場所で床材、建材、建具や便器、窓ガラスその他使えそうなモノ一式をもらい、それをストックしておいて改修時に使うというやり方である。
だが、次第に活動が知られるようになり、回収した廃材を置いておく場所、活用する先もキャパシティを越えてきた。そこで廃材を集積し、利活用する担い手を増やす、使い道そのものを開発して広めるなどの活動を目指して現在改修が進んでいるのが廃屋を利用した店舗「山脈」である。


再生に当たっている丸山さんは大学で家具デザインを学んでいたが、卒業間近に起きた東日本大震災に衝撃を受け、その後ずっと社会課題に対してデザインで何ができるかを考えてきた。
モノを作る身として経済効率最優先、大量に調達、消費、廃棄する社会に疑問を感じ、デザインは作る前の素材の調達から最後、モノが破棄されるまでの循環を考えることが必要ではないかと考えるようになったのだ。

社会人になった丸山さんはモノ作りの現場を経て福祉や環境問題、高齢化社会その他さまざまな社会課題にデザインの思考と手段で向き合う神戸市のデザイン・クリエイティブセンター神戸(愛称KIITO)の企画部門に従事。
空き家問題、環境問題、消費行動に関心を持ち、身の回りの資源を循環させ、最大限に活用しようと試みる人たちの活動をリサーチ、学んでいるうちに長野県諏訪市にあるリビルディングセンタージャパン(リビセン)と出会う。
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