宅配業者は「過重労働の矛盾」に直面している ネット通販の利便性を支える過酷な現場

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──宅配便におけるサービス残業の実態も、目撃されてますね。

横田 増生(よこた ますお)/1965年生まれ。関西学院大学卒業後、予備校講師を経て、米アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号取得。帰国後、物流業界紙『輸送経済』記者、編集長を経て、1999年フリーランスに。著書『ユニクロ帝国の光と影』に対し名誉毀損で提訴されるも勝訴。ほかに『潜入ルポアマゾン・ドット・コム』など。

ヤマトのセールスドライバーの例だと、朝6時半に出勤して積み込み作業を始め、配達終了後に伝票整理などをして終業するのが夜10時。ところが業務で使用するポータブル端末を立ち上げるのは朝8時で、閉じるのがセンターに戻った夜9時すぎ。この端末の稼働時間が彼らの勤務時間になる。ほぼないに等しいお昼休みを足せば、サービス残業は1日3時間、月20日勤務で60時間、8万円弱の未払い。年間では100万円近い金額になります。

出勤しても×時までは端末を立ち上げるなと指示するセンターもある。そうなると確信犯ですわ。ヤマトは20万人も従業員がいて人件費率50%だから、さらに3時間分賃金が上乗せになれば利益が大幅に減る。明らかに違法ですが、それが横行してる。これは佐川も一緒です。ヤマトは14年、勤務時間の短縮登録を適正化するよう社長通達を出しましたが、実情はほとんど変わってないようです。

──現場はかなり疲弊している?

サービス残業の原因の一端が、個人宅への再配達や時間指定サービス、代金引き換えサービスなどで、ドライバーの負担がどんどん増えています。宅配便の不在持ち戻り率は20%に達してる。時間指定などは少しでもズレると苦情が来るので、早く到着してもその時間まで待ちます。時間指定も不在持ち戻り率はほぼ同水準。いっそ有料にするかやめるか、って話ですわね。ホント現場はシンドイから。100個200個配達する中で時間指定があると効率的に回れない。あれがけっこう負担になるんです。

バイト入れ替わりの時期は大混乱、怒号も

──国内最大規模のヤマトの羽田クロノゲートにも潜入しました。

夜10時から朝6時まで1カ月、クール宅急便の仕分けと積み込み作業をしました。この宅急便の心臓部がいちばんシンドかった。深夜手当込みで日当8925円、1カ月16万5000円でした。あそこの場合、2カ月で契約が一度打ち切りになり、1カ月置いて、2カ月の再契約になる。

最大でも年に8カ月しか働けない。やっと仕事を覚えても1カ月ブランクが空き、メンツも替わるから現場はすごくギスギスしてるんですね。バイトが一斉に入れ替わるタイミングでは、現場は大混乱でした。そりゃ混乱もしますわ。新人に仕事のやり方などほとんど説明もせずに、いきなり現場投入ですから。

宅配便の仕分け作業、とりわけクール便の場合、これにはドライアイスを何個入れるとか、温度は何度とか、最低6種類あるボックスのどれを使うかとか複雑だから、説明がないと何もできない。新入りはまともな説明なしだから見よう見まねでやる。間違えたら怒鳴る、が流儀の職場でした。怒鳴られても、怒鳴られる理由がわからない。あれで日当9000円以下じゃ、人が来ませんわね。

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