フォルクスワーゲンの混迷、新CEOを待つ悪路 排ガス規制逃れの重い代償
米国での不正について、業界内では市場シェアの挽回を図るために無理をした、との見方が多い。
VWは、年間1500万台強の巨大な米国市場で、低シェアにあえいできた。2000年代、米国の販売台数は年間40万台弱で、シェアは3%程度と超がつく“低空飛行”。自社の世界販売でも米国は1割未満だ。トヨタ自動車、ホンダといった日本勢が米国市場で飛躍を遂げ、足場を築いたのとは対照的だった。
さらに2000年代半ばにはトヨタの「プリウス」が高い環境性能で大ヒット。これに対し、打倒トヨタ、打倒プリウスのためにVWが用意したのが、ディーゼル車だった。
見えてこない不正の動機
世界的に見て米国の排ガス規制は飛び抜けて厳しい。特にNOXは、2008年当時の欧州の規制値の約半分以下に抑える必要があった。要求される耐久性や燃料品質の違いを考慮すれば、規制の厳しさは倍以上といえる。こうした背景もあり、ディーゼル車の普及率が5割近い欧州に対し、米国は1%程度だった。
だからこそ、排ガス規制に合致する新しいディーゼル車を投入すれば、米国でアピールできる。しかし、現実には、規制をクリアしていなかった。これは技術的な難しさだけでなく、VWの主力となる廉価な中小型車というコスト、スペースの制約があったからかもしれない。
結局、VWは規制の厳しい米国で“禁じ手”を使って拡販を図ったが、それ以外の国で不正を働いた動機は不明だ。当時の欧州、まして新興国で無効化機能に頼る必要性は、どこにあったのか。
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