フォルクスワーゲンの混迷、新CEOを待つ悪路 排ガス規制逃れの重い代償

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問題発覚後、ヴィンターコルン前CEOは、「わずかな人数によるミス」と述べていた。実際にVWは一部従業員の停職を勧告しているという。ただ、欧米メディアは「2011年段階でVW社内で不正の指摘があった」「2007年から独部品メーカーのボッシュがVWに警告していた」など、組織ぐるみによる隠蔽の可能性を暴き立てている。

VWは排ガス不正の問題収束を急ぐのと並行し、トップ交代に当たって、グループのブランド間で経営陣を入れ替えるなど、今後立て直しを図る構えだ。いずれにしても、ミュラー新CEOには悪路が待ち受けている。

米国での制裁金は、当局への恭順姿勢を示せば減額されるのが通例で、2兆円には達しないだろう。それでも、違法行為が認定された各国で、制裁金を科される。

中国減速も悩みの種

「販売した車の無効化機能を外し、米国の排ガス規制をクリアできるのかが不明なうえ、規制値以下に抑え込めば、従来どおりの性能が出なくなる可能性もある」(国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏)。消費者や投資家からの訴訟リスクもある。そうなると不正の対処費用が第3四半期に計上する65億ユーロで済む保証はない。ただし、2014年度には純利益で約1.45兆円を稼ぎ出しており、2015年6月末の自己資本は約13兆円。ある程度の損失ならば、持ちこたえられる。

シェアが低い米国はともかく、主力の欧州で販売が落ち込むと、経営危機に直結する。さらに頭が痛いのは、急成長を遂げてきた中国だ。乗用車のディーゼル比率は1%弱と低いが、ブランド失墜の影響と無縁でいられるのか。タイミング悪く4月以降の中国市場はマイナス、VWも販売台数が減っている。世界的メーカーを覆う深い霧は当分晴れそうにない。

「週刊東洋経済」2015年10月10日号<10月5日発売>「核心リポート01-1」を転載)

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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