フォルクスワーゲンの混迷、新CEOを待つ悪路 排ガス規制逃れの重い代償
「信頼を取り戻すために、あらゆることをやる」──
9月25日に開いたドイツ本社での会見で、新しくフォルクスワーゲン(VW)の会長兼CEOに就いたマティアス・ミュラー氏は、厳しい表情で決意を述べた。
不正発覚当初、続投に意欲を示していたマルティン・ヴィンターコルンCEOは、23日付で辞任。VW傘下のポルシェのトップであるミュラー氏が緊急登板した。が、これまで築き上げたVWの信頼は、完全に瓦解。株価は1週間余りで4割下落し、約4兆円の時価総額が消失した。
規制値の40倍を垂れ流し
事の発端は9月18日。米国環境保護局(EPA)は、VWグループが2008年以降に米国内で販売した約48万台のディーゼル乗用車が、違法なソフトウエアを使って排ガス規制を回避していたことを発表した。具体的には、走行状況などから排ガス試験が行われていることをソフトが感知し、その間だけ有害物質の窒素酸化物(NOX)排出を規制の範囲内に抑えるというもの。一方、通常の運転時は、規制値の最大40倍のNOXを垂れ流していた。
こうしたソフトは「ディフィート・デバイス(無効化機能)」と呼ばれ、米国や欧州では法律で禁じられている。米当局は制裁金を科す姿勢を示しており、その額は最大で2兆円超という。
米当局がVWに疑いをぶつけたのは1年以上前。水面下での攻防の末、最終的にVWが違法行為を認めた格好だ。
9月20日にVWは「真摯に受け止め、心からお詫びする。外部調査を依頼した」との声明を発表。22日には、問題のソフトを搭載したディーゼルエンジン車が全世界で1100万台ある、と公表した。内訳は、VWが500万台のほか、アウディやシュコダ、商用車など多岐にわたる。2015年第3四半期(7~9月)に対処費用として、65億ユーロ(約9000億円)の引当金計上を予定している。
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